国内初のデジタル債と新たな決済スキームの発表
株式会社野村総合研究所(NRI)、野村證券株式会社、BOOSTRY、ディーカレットDCP、三井住友銀行らが連携し、国内初のデジタル債の発行とデジタル通貨による証券決済の概念実証を実施するプロジェクトを発表しました。これにより、デジタル証券市場の拡大に向けた重要な一歩が踏み出されました。
プロジェクトの概要
このプロジェクトには、二つの主な取り組みが含まれています。まず一つ目は、国内初となる決済スキームを用いたデジタル債の発行です。このデジタル債は、DVP(Delivery Versus Payment)決済を実現し、非常に短い決済期間を可能にしました。具体的には、公募債の発行後、約定から1営業日での決済を実現しており、これまでの約定日から4営業日後という従来の方式と比較して大幅に短縮されています。これにより、資金調達の過程もスムーズになり、発行体は迅速に資金を受け取ることが可能となりました。
二つ目は、デジタル通貨を活用した証券決済の概念実証(PoC)です。株式会社ディーカレットDCPが開発したトークン化預金「DCJPY」を用いたこの実証では、デジタル通貨を用いて証券決済プロセスの自動化や効率化の可能性が探求されました。このプロジェクトにより、従来の法定通貨を用いたプロセスに置き換えた場合でも、難なく実行可能であることが確認され、将来的なデジタル通貨による証券決済の実現に向けた期待が高まっています。
プロジェクトの背景
最近ではデジタル証券市場が拡大しており、2020年のNRIによる私募債発行以降、公募発行総額はおよそ1,500億円に達しています。この市場の拡大に伴い、決済リスクが投資家の参加を阻む要因となっていました。このプロジェクトは、BOOSTRYと三井住友銀行の協力によって新しい決済スキームを導入し、DVP決済のスタンダード化を目指しています。
各社の期待する成果
このプロジェクトによって期待される成果は多岐にわたります。野村総合研究所は、このデジタル債の発行を重要な資金調達手段として位置付け、市場の拡大に貢献する意義を強く感じています。また、野村證券は、デジタル通貨の決済手段が生活に与える影響について理解を深める貴重な機会であるとしています。
BOOSTRYは、安心・安全なDVP決済を実現するための新しい道筋を見出したことに自信を持っており、ディーカレットDCPも業界の標準化を実現する大きな一歩としてこのチャレンジに取り組んでいます。
今後の展望
今後、デジタル通貨による証券決済の実現に向けて、さまざまな課題の克服が求められます。このプロジェクトを通じて得られた知見を基に、業界全体での標準化を目指し、決済システムの効率化や利便性の向上を図っていくことでしょう。デジタル債とデジタル通貨がもたらす新たな金融エコシステムの実現に向けて、さらなる進展が期待されます。
結び
このプロジェクトは、金融業界の未来に向けた重要なステップであり、デジタル技術の進化が金融のあり方をどのように変えるのか、引き続き目が離せません。デジタル証券市場は、今後の発展に不可欠な要素となっていくでしょう。