希少がんメラノーマ早期発見を目指す取り組み
最近、千葉県で行われている「皮膚がんエキスパートライン」というプログラムが注目を集めています。このプログラムは、希少がんであるメラノーマを早期に発見・治療することを目的としたもので、地域医療機関との強固な連携を通じて実現されています。2024年度には、国立がん研究センター東病院の皮膚腫瘍科が監修し、1年間の活動成果がまとめられました。以下では、このプログラムの背景と内容、具体的な取り組みについて詳しく解説します。
背景:専門医へのアクセス改善の必要性
希少がんは専門医が限られており、正確な診断と適切な治療までに多くの時間を要することがあります。日本においてメラノーマ患者が初めて受診するまでの期間は、中央値で約2年、平均するとのべ約5.4年と報告されており、欧米と比較しても遅れが顕著です。この遅れの結果、がんが進行した状態で治療が始まることが少なくありません。このような状況は、メラノーマに限らず他の希少疾患や難病にも共通しており、専門医へのアクセス改善は社会的な課題して取り組むべき事項です。
目的:スムーズな専門医受診の実現
「皮膚がんエキスパートライン」は、地域医療機関と専門医の間の「縦の連携」と、専門医同士の「横の連携」を強化することで、皮膚がんの早期発見と治療、疾患啓発を促進することを目指しています。こちらのプログラムでは、特に千葉県東葛地区をパイロットエリアとして活動を展開しました。
取り組みのポイント
このプログラムでは、いくつかの重要な活動が行われています。
1.
地域医療機関への案内と賛同施設の拡大
地域のクリニックで「皮膚がんエキスパートライン」の意義や利用方法を周知し、「千葉県東葛地区は皮膚がん治療が早い」との認識を広めるため賛同施設を募集しました。
2.
Webセミナーの開催
皮膚科の開業医を主な対象に、皮膚がんの診療に関するノウハウや本プログラムの活用方法を紹介するセミナーが実施されました。
3.
継続的な情報提供
賛同施設には、定期的に皮膚がんに関連する最新情報を提供し、診療の質の向上を図る取り組みを行いました。
4.
オンライン相談窓口の提供
疑わしい症例について、国立がん研究センター東病院の専門医とオンラインで相談できる仕組みも導入されました。
5.
学会での発表
「皮膚がんエキスパートライン」の取組みは、第88回日本皮膚科学会東京支部学術大会においても紹介されました。
結果と今後の展望
非常にポジティブな反応があったことが報告されています。千葉県東葛地区の皮膚科クリニックの半数以上が「皮膚がんエキスパートライン」に賛同し、92%の医師が専門医への紹介の重要性を理解したと回答しています。
この取り組みにより、皮膚がんの早期発見や地域医療連携の強化が進んでおり、今後も他の希少疾患への展開が期待されている状況です。
医療監修者からのメッセージ
国立がん研究センター東病院の皮膚腫瘍科での専門医は、本プログラムを通じて実現した医療連携の成果に感謝の意を表し、皮膚がんの早期診断及び治療が患者にとってどれほど重要なかを強調しています。今後も、より多くの患者が必要な医療に迅速にアクセスできるよう、さらなる努力を続けていく所存です。
このような取り組みは、今後の医療モデルとして広がりを見せ、地域医療の改善に寄与することが期待されています。