サーキュラーエコノミーにおける信頼の構築
2025年7月8日、イギリスの英国規格協会(BSI)が発表したレポート『The Tipping Point: Building trust in the circular economy』は、サーキュラーエコノミーへの移行を妨げる要因として消費者の信頼の欠如を指摘しました。このレポートは、環境保全を重視する現代の社会において重要な知見を提供しています。
サーキュラーエコノミーとは?
サーキュラーエコノミー、つまり循環経済は、資源の再利用や廃棄物の抑制を通じて持続可能な社会を目指す経済モデルです。再生品や修理された製品の利用が推奨され、これにより地球環境への負担を軽減しようという取り組みです。しかし、BSIの調査によれば、「再生品の品質や安全性に対する懸念」が、消費者にとって大きな障壁となっていることが判明しました。
消費者の不安要素
本レポートによると、68%の消費者がリユースやリペア、リサイクルが環境に良い影響を与えると認識していますが、同時に「不安要素」が再生品の購入を妨げているとされています。具体的には、次のような懸念が挙げられています。
- - 品質(56%): 再生品の品質が低いのではないかという不安。
- - 安全性(51%): 再生品が安全であるかどうかの懸念。
- - 信頼性(49%): 企業のサステナビリティに関する主張が信用できないと感じる消費者が多数。
実際、企業のサステナビリティに対する主張を信じていないと答えた消費者は3分の1に達しました。しかし、59%の消費者は、認証マークがあれば信頼性が高まると感じています。
意識と行動のギャップ
BSIの調査では、サーキュラーエコノミーへの行動が、実際には消費者にとって難しいことも浮き彫りになりました。周囲の人が実施しているのを見る前に行動を起こす、いわゆるアーリーアダプターと見なされる消費者が多いのはインド(67%)や中国(65%)のようですが、日本は34%と最も低い結果となっています。
環境意識の高まり
世界的には67%の人々が循環型行動を取る理由として「環境保全上のメリット」を挙げていますが、その実際の行動には大きなギャップがあります。例えば、中古の家具や再生家具を購入すると回答したのはわずか29%、規格外の食品に対して積極的な購入志向を示したのは25%にとどまっています。これらの結果は、消費者が環境問題についての意識を高めながらも、実際に行動に移すことに対して慎重であることを示しています。
認証マークの必要性
消費者が循環型製品を選択するためには、信頼に足る第三者による認証や証明が必要です。BSIの最高責任者であるスーザン・テイラー・マーチンは「消費者が再生、修理、リサイクルされた商品を選ぶ際、品質、安全性、信頼性に関する新たな懸念を持つことが多い」と述べています。
企業の役割と今後の展望
企業は、単に製品を提供するだけではなく、その持続可能性や価値を実証することで消費者との信頼関係を築くべきです。BSIグループジャパンの漆原将樹社長は、「日本でも循環経済へ移行することが求められており、信頼性の高い認証マークは消費行動を促進する手立てになる」と指摘しました。
まとめ
このレポートは、サーキュラーエコノミーが持つ可能性を再確認させるものです。信頼と信用を構築することで、より持続可能な消費行動を促進し、最終的には地球環境を守ることに寄与するでしょう。消費者、企業、そして社会全体が一丸となり、新たな価値を築くために進化し続けることが期待されています。
(レポート全文はこちらからダウンロード可能です)