歌集『ポケットに』の魅力
歌は、特別なものではなく、私たちの日常の中に、いつも存在しています。そんな視点で、歌人・朝倉恵子さんの新しい歌集『ポケットに』がリリースされました。本作は、彼女が長年にわたって詠んできた詩をまとめた第一歌集であり、私たちの心に寄り添うつぶやきが詰まっています。
日常の中の小さな発見
歌集『ポケットに』のタイトルは、故郷である姫路市白浜町を詠んだ連作から取られています。朝倉さんは「今、元気に暮らしている私にできることは、暮らしの中の小さな発見を積み重ねて、時々ポケットから出すようにして向き合っていくことです」と語っています。この言葉が示すように、詩を通じて日常の美しさや発見を伝えようとする姿勢が、本書の根底に流れています。
心に響く詩の数々
詩の一部を紹介すると、次のような作品があります。
"乾麺がたしかここらにあったはず薄暗がりにりんごが香る"
この詩からは、記憶の中の温かい香りや、過去の出来事が蘇るような感覚が描かれています。また、
"五月山は駅舎の屋根によく似合う力を抜かず力を溜めず"
といった表現からは、日常の中での静かな風景が浮かんできます。朝倉さんの詩は、毎日の暮らしの中でのささやかな出来事を丁寧に捉え、その瞬間の感情を巧みに言葉に変えています。
読者に寄り添う一冊
この歌集は、2000年頃から最近までの20年以上にわたる彼女の作品を収めています。多くの場合、詩集は読むことが難しいと感じられるかもしれませんが、『ポケットに』はそんな心配を余計にすることなく、誰もが身近に感じられる詩を提供してくれます。朝倉さんの詩の中には、彼女の独特な気質が自然に表現されており、まるで友人との会話のように親しみやすいのです。
推薦者である歌人・足立晶子氏は、「歌は特別なものでなく、いつもそこにある」と称賛しており、朝倉さんの作風を象徴する言葉と言えるでしょう。
書籍情報と購入方法
『ポケットに』は、546ページの四六判で、価格は1,100円(税込)です。発売日は2025年4月15日で、全国の書店やオンラインで購入可能です。Amazonや出版社のパレードブックスのページもぜひチェックしてみてください。
この歌集は、日常にある小さな美しさを再発見する手段となるでしょう。毎日の忙しい生活の中、立ち止まって本作を手に取ってみてください。あなたの心に沁み入る一句が見つかることでしょう。