多発性骨髄腫治療継続の現状:患者と医師の認識ギャップに迫る
近年、多発性骨髄腫の治療は著しい進歩を遂げ、長期生存が可能となっています。しかし、治療は長期に及ぶため、患者さんにとって身体的・経済的・精神的な負担が少なくありません。
ヤンセンファーマ株式会社が実施した調査では、多発性骨髄腫患者と医師の間で、治療継続に関する認識に大きなギャップがあることが明らかになりました。この調査は、治療継続の実態と、前向きに治療を継続するために必要な要素を明らかにすることを目的として、2024年6月に実施されました。
患者側の現状
調査によると、患者の80%は薬物治療を「落ち着いた状態を維持するために長く続けるもの」と認識しています。しかし、半数以上が通院の負担、治療費、治療の長期化による精神的負担などから、治療を途中で休みたいと思った経験があると回答しました。
興味深いことに、治療を休みたいと思った患者のうち、約7割は実際に治療を中断していませんでした。結果的に、患者の約8割が治療を継続しているという現状が示されています。
患者が治療を前向きに継続するために重要な要素として、「医師からの十分な説明」「医師への相談」「病気や治療に関する情報の入手」が挙げられました。これらの要素は、患者自身の治療に対する理解と安心感を深める上で欠かせないものと言えます。
医師側の視点
医師の調査結果では、症状が軽快した患者でも約7割が治療を継続していることが分かりました。これは、患者側の治療継続の実態と一致しています。
医師も患者と同様に、「医師からの十分な説明」「医師への相談」「病気や治療に関する情報の入手」を治療継続のための重要な要素として挙げています。
さらに医師の注目すべき点は、患者の家族や、同じ病気を持つ患者同士のつながりの重要性を指摘している点です。医師の約半数は、家族が患者の不安を共有し、情報を得られることが治療継続に重要だと考えています。一方、患者自身はこの点に関する認識が低いというギャップが見られました。
認識ギャップと今後の課題
今回の調査から、多発性骨髄腫の治療継続において、患者と医師の間で認識のギャップが存在することが明らかになりました。特に、家族や患者同士の支えの重要性については、医師の方が高く評価している一方、患者自身の認識は低いという結果が示されています。
このギャップを埋めるためには、医師による患者への積極的な情報提供と、家族を含む周囲の理解を促進する取り組みが不可欠です。患者会などのコミュニティ形成を支援し、患者同士の情報共有や相互支援を促進することも重要です。
また、治療に伴う経済的負担の軽減策や、精神的なサポート体制の充実も課題として挙げられます。
まとめ
多発性骨髄腫治療の長期継続には、患者、医師、家族、そして同じ病気を持つ患者同士の連携が不可欠です。今回の調査結果を踏まえ、より患者中心の医療提供体制の構築と、治療を継続しやすい環境整備が求められます。今後、患者と医療関係者間のコミュニケーションの質を高め、治療に関する不安や疑問を解消し、安心して治療を続けられる体制づくりが重要になります。