児童養護施設退所者トラッキング調査2024
2024年6月から7月にかけて、児童養護施設退所者トラッキング調査が実施され、全国の児童養護施設の退所者についての詳細な報告書が完成しました。この調査は2020年から始まった10年計画の一環で、全国576の児童養護施設にアンケートが配布され、120施設から2902名の退所者の回答を得ました。報告書は74ページにわたり、退所者が直面する経済的・メンタル的課題が浮き彫りになっています。
調査の目的と方法
調査は特定非営利活動法人ブリッジフォースマイルによって実施され、退所者の進学状況や就労の実態、支援制度の利用、住居状況などを詳しく分析することを目的としています。収集したデータは、今後の支援施策に役立てるため、重要な基礎資料とされています。
アフターケアの現状
昨年に引き続き、退所後の支援体制に焦点を当てており、2024年4月には「児童自立生活援助事業」の制度が拡大されました。これにより措置解除者も緊急時に支援が可能となりますが、施設によって制度の導入状況にはばらつきが見られます。調査では、発表された結果の一つとして、7つの施設に1つの割合でアフターケア担当職員が不在であることが判明しました。また、14%の施設ではまだその担当が配置されておらず、改善の兆しはあるものの、依然として課題が残ることが明らかになりました。
進学・就労の実態
特に興味深いのは、大学進学率が前年より減少した点です。給付型奨学金が支援される一方で、進学の意向を本人が考慮する傾向が強まっていることが推察されます。また、退所後に正社員として就労した人々のうち、3分の1が1年3ヶ月以内に離職しているというデータも、経済的な自立に向けたリスクが依然として高いことを示しています。
メンタルヘルスの重要性
調査では、メンタルヘルスに関する調査が新たに行われ、退所者の中で精神科や心療内科に通院している割合が24.2%となっています。これは全国の若者(15-24歳)の平均3.1%と比べて非常に高い数値です。また、大学進学者の中退率は、経済的支援を受けているかどうかで2倍の差が出るとのことです。このように、経済的な支援とメンタル面のケアは、円滑な自立に向けた大きな要素といえます。
住まいと人間関係
退所後の住居については、親元に戻る割合が5年前から減少しており、代わりに支援者との同居が増加しています。家庭とのつながりが弱まっている中、支援者との関係が重要な役割を果たしていることが伺えます。さらに、健康保険への加入状況も問題であり、施設側では未加入者の把握ができていない現状が残っています。
これらの調査結果は、児童養護施設退所者の自立に向けた課題を示しており、今後の支援体制の構築において重要な指針となるでしょう。今後も、こうした調査を基に改善が進むことを期待したいです。