日本式教育の波がエジプトにやってきた
エジプトの公立学校において、日本の教育スタイルを取り入れた算数/数学の学習が始まった。これは株式会社すららネットが提供するICT教材「Surala Math」を使用し、エジプト日本学校(EJS)の4校で実施されるもので、初めての試みである。対象となるのは4、5年生の希望児童約70名で、放課後授業で基礎学力の定着を図ることを目的としている。
エジプト教育の現状
近年、エジプトでは人口増加に伴い学校での児童生徒数が増え、クラスの過密化や教員不足が深刻な問題となっている。授業内容は主に暗記や試験重視のスタイルが主流であり、そのため協調性や社会性を育むことが困難であるという指摘がなされてきた。エジプトは国際的な数学・理科教育動向調査(TIMSS)でも低い成績を記録しており、教育改革の必要性が急務とされている。これを受け、エジプト政府は2016年に日本との「エジプト・日本教育パートナーシップ」を締結し、日本式教育の導入を決定した。
日本式教育の導入とEJSの役割
EJSでは、日本式教育の「特別活動」の一環として、掃除や学級会などが取り入れられ、子どもたちの主体性や社会性を育むことを目指している。国際協力機構(JICA)が主導するプロジェクトの支援を受けて、2018年に35校が開校され、現在では51校にまで増えている。EJSの人気は年々高まっており、それにともなって学習環境も向上していると見られる。日本式教育が持つ協調性や主体性の育成が、エジプトの教育現場に新たな風を吹き込んでいる。
すららネットのICT教材「Surala Math」とその効果
すららネットが提供する「Surala Math」は、インタラクティブなアニメーションを活用した算数の教材で、特に計算能力を養うための「Surala Ninja!」が含まれている。この教材の導入によって、EJSでも百マス計算を学ぶことができ、計算力の向上に大きく寄与している。エジプトでも教育の地域格差があり、特に南部アスワン地域からの参加希望が多く寄せられており、地域ごとの学力差が明らかになった。すららネットは、これらの情報をもとに教育の地域格差を解消するための取り組みを進めていくことを目指している。
教師や児童の反応
現地の先生たちは「Surala」の特長として、計算のスピードや正確性を教えられる点を挙げ、高い評価を与えている。また、生徒たちもこの教材を通じて責任感を持ち、自立学習の重要性を感じているとのことで、成功を収めている様子だ。実際に、New Cairo校に通うAdam Ebadaさんは、アニメーションを通じて楽しく学べることに喜びを感じ、さらなる学習への意欲を高めているという。
すららネットの今後の展望
すららネットは今後もエジプトでの教育展開を加速させる方針で、カイロ市内での導入を広げるなど、現地の児童生徒が享受する教育機会を増やしていく。そして、日本式教育の優れた点を生かしながら、エジプトにおける教育改革に貢献していくことを目指している。日本式教育が今後どのようにエジプトの未来に影響を与えるのか、一層の注目が集まることになりそうだ。