日本のモバイルネットワーク体感レポート2025年版の概要
2025年10月、ロンドンを本社とするOpensignalが日本市場向けの最新「モバイル・ネットワーク・ユーザー体感レポート」を発表しました。これは2025年7月11日から10月8日の期間中に、ユーザー端末から直接収集した実測データをもとに、日本の主要オペレーター4社、すなわちNTTドコモ、au、ソフトバンク、楽天モバイルのサービス品質を多角的に評価したものです。
主な分析結果
auの優れた信頼性
まず注目すべきは、auが954点という高得点で「信頼性エクスペリエンス」の部門において3年連続で首位を獲得したことです。この評価は、ユーザーがネットワークに安定して接続し、日常的なタスクをスムーズに行えたかどうかを基にしたものです。ソフトバンクは5ポイント差で2位に位置します。
一貫した品質でのauの圧勝
次に、auは「一貫した品質(コンシステント・クオリティ)」においてもトップを獲得。84.8%という高い値を記録し、ソフトバンクはわずかに1ポイント差で追随しました。この評価は、一般的なモバイルアプリにおいて、高難易度なタスクであっても安定して機能を提供できるかどうかを評価したものです。
アップロード分野で独走する楽天モバイル
また、楽天モバイルは「アップロード・スピード・エクスペリエンス」において15.3Mbps、「5Gアップロード・スピード」では24Mbpsという数値でソフトバンクを大きく引き離しました。これは、データを送信する速度の面で圧倒的に強いことを示しています。
ソフトバンクがダウンロードスピードで受賞
対照的に、ダウンロード・スピード・エクスペリエンスではソフトバンクが受賞しました。55.7Mbpsという速度は、前回の報告から2Mbps向上し、従来の1位であったauを1Mbps差で逆転しました。
NTTドコモのカバレッジと5G
NTTドコモは「カバレッジ・エクスペリエンス」および「5Gカバレッジ・エクスペリエンス」で単独受賞を果たし、その広範なサービス提供能力を示しました。この結果は、人口が密集する地域における電波の届きやすさを表すものです。
地域別の受賞状況
地域別の賞では、auが最多受賞し、「ゲーム・エクスペリエンス」や「5Gゲーム・エクスペリエンス」でも高評価を得ました。一方、楽天モバイルは「アップロード」に関して地域別に首位を獲得し、合計32の賞を得る結果となりました。
市場の動向
近年、日本のモバイル市場はさまざまな変化を遂げています。特に、都市と農村のデジタル格差が存在し、農村地域ではユーザーのモバイル依存度が高い一方、電波が届かない時間が多いという現状があります。政府は「デジタル田園都市国家構想」を通じて、未サービス地域への基地局の整備を進めています。
さらに、ハイブリッドインフラへの投資も進行中です。これには、衛星通信や成層圏プラットフォーム(HAPS)を使用した新たな通信手段が含まれ、これによって遠隔地でも通信が可能となる見通しです。
5Gのスタンドアロン(SA)方式の導入も加速しています。楽天モバイルは商用開始に向けた準備を進めており、無線機器の共有によって効果的なカバレッジと性能向上が期待されています。
アナリストの声
Opensignalのプリンシパルアナリスト、ロバート・ウィルコウスキー氏は「日本の市場では、信頼性、高速性、広いカバレッジの三位一体の進化が見られ、都市と農村の双方でサービスの質を向上させるための取り組みが進行中です」と述べました。
まとめ
このレポートを通じて、ユーザーの体感的なネットワーク品質がどのように変化しているのか、そして各オペレーターがどのように競争を繰り広げているのかを把握することができます。ネットワークの進化は、今後ますます重要なテーマとなっていくことでしょう。