ブリ養殖における新たな挑戦
2025年5月、共立製薬株式会社は、ウルフ魚などのブリ属魚類向けに新しいワクチン「ピシバック®注 レンサα3 oil」の販売を開始すると発表しました。このワクチンは、ブリ養殖業において最も深刻な問題の一つであるα溶血性レンサ球菌症の予防を目的としています。この疾病は、特にブリやカンパチ、シマアジといった魚に多く、魚病被害の中でも特に大きな経済的損失を引き起こす要因の一つとなっています。
α溶血性レンサ球菌症とは?
1974年に初めて発見されたα溶血性レンサ球菌症は、養殖業者にとって長年の悩みのタネであり、感染した魚は一般には出荷できません。これまで知られていたのは2つの血清型(I型、II型)ですが、2021年に新たに III型が確認されました。この新型による被害が多様な海産魚種で報告され、養殖業界全体にさらなる影響を及ぼす可能性が懸念されています。
新ワクチン「ピシバック®注 レンサα3 oil」の特長
新たに販売される「ピシバック®注 レンサα3 oil」は、このIII型を含む3種類の血清型に対応している、世界初の混合ワクチンです。このワクチンは、ブリ属魚類に腹腔内注射で投与することで、あらゆる血清型のα溶血性レンサ球菌症に対する予防効果を示します。また、過去の調査報告ではIII型のα溶血性レンサ球菌症原因菌において、薬剤耐性菌株が出現していることも指摘されています。この新しいワクチンの普及が、薬剤耐性(AMR)と戦う手助けになることが期待されています。
日本魚病学会での発表
新ワクチンに関する詳細は、2025年3月17日から18日に開催された日本魚病学会春季大会で紹介されました。ここで発表されたデータは、III型のα溶血性レンサ球菌症の疫学とともに、これがいかにブリやカンパチに大きな影響を与えているかを示すものでした。
共立製薬のこれから
共立製薬株式会社は、1955年から動物医療のリーディングカンパニーとして、犬や猫用の医薬品から水産動物用医薬品の開発、製造、販売を行ってきました。これからも養殖魚の安全性向上や、魚病対策に力を入れていく姿勢を示しています。私たち消費者も、この新しいワクチンによって、安全で新鮮な海の幸を楽しめる日を心待ちにしています。
企業概要
- - 名称: 共立製薬株式会社
- - 代表者: 高居隆章
- - 設立: 1955年5月
- - 資本金: 5,500万円
- - 従業員数: 733人(2024年5月末時点)
- - 事業内容: 動物用医薬品の開発、製造、販売、輸出入
- - ウェブサイト: 共立製薬株式会社
新しいワクチンがもたらす養殖業界の改善に、業界関係者だけでなく、消費者も注目を寄せる必要があります。今後の展開が期待されます。