自己負担が阻む高齢者の新型コロナワクチン接種の現状とは
2023年5月、施行された新型コロナウイルス感染症の法的位置づけの変更(感染症法5類移行)以降、感染拡大の兆しが見られています。この背景には、高齢者福祉を支えるケアマネジャー(以下、ケアマネ)の接種勧奨活動が影響している可能性があることが、最近の調査から明らかになりました。
この調査は、全国で活躍するケアマネジャーを対象に、新型コロナワクチンの接種に関する意識や実態を把握するために実施されました。調査は、「ケアマネジメント・オンライン」に登録している621名のケアマネジャーを対象に、2024年6月25日から7月2日の間に行われました。その結果、接種勧奨に関する課題が浮き彫りになっています。
ケアマネによるワクチン接種勧奨の不足
調査結果によると、ケアマネたちが新型コロナウイルスワクチンを推奨する意向を11段階のスコアで評価したところ、平均スコアは4.6と低調で、インフルエンザワクチン(6.9)よりもかなり消極的な姿勢が示されました。特に、定期的に接種の確認や声かけを行っているケアマネはわずか12.6%にとどまり、流行の状況に応じてアプローチを行っているケアマネが24.9%しかいないという結果が得られました。
このことから、ケアマネによる新型コロナウイルスワクチンの接種勧奨が非常に限られたものであり、感染リスクが高まる要介護高齢者に対して十分な取り組みが行われていないことが明らかになりました。今後、より一層の対策が求められます。
利用者の接種状況とその理由
次に、利用者における新型コロナウイルスワクチン接種の実態を見てみましょう。32.9%のケアマネは担当利用者の中に定期的にワクチン接種を行っている人がいると回答しました。定期的に接種する理由は、「感染予防」が76.5%であり、「症状悪化の予防」(61.3%)や「基礎疾患があるから」(61.3%)が続いていました。
一方で、新型コロナウイルスワクチンを接種していない利用者については、37.5%のケアマネがインフルエンザワクチンは接種しているがコロナワクチンは接種していないと答え、その理由として「副反応が怖い」と「自己負担がある」がそれぞれ60.1%と56.7%に達しました。このことは、経済的な理由が高齢者のワクチン接種において大きな障壁となっていることを示しています。
ケアマネの予想によれば、自己負担が0円であれば約70%の利用者が接種を希望するというデータがあった一方で、自己負担が3000円、7000円になるに従い、それぞれ希望する利用者は1割にまで減少します。この結果から、経済的負担が直接的な接種意向に影響を及ぼすことが改めて確認できました。
経済的対策が求められる
以上の調査を総合すると、要介護高齢者が新型コロナウイルスワクチンを接種しない理由には、主に経済的な事情が大きく関与していることが分かります。事実、Covidワクチン接種を進めるためには、自己負担額の軽減が有効な施策の一つとして浮上します。
今後は、ケアマネが積極的にワクチン接種を勧奨できるような環境づくりが重要です。特に、自己負担軽減やワクチンの安全性、効果に関する情報提供などが必要とされます。
この調査は、ケアマネジャーや医療関連の多職種が連携を図り、高齢者の健康を守るための啓発活動を推進するための参考になるでしょう。調査結果のデータ提供についても、製薬業界や医療機関が活用できる内容が多く含まれています。