能登半島地震の被災地に創られる「狼煙のみんなの家」
2023年1月に発生した「令和6年能登半島地震」は、奥能登地域に大きな影響を与えました。この地震により、多くの建物が損傷し、人々の日常生活は一変しました。復旧は少しずつ進んでいるものの、今年9月の豪雨災害により更なる打撃を受け、地元住民の復興への道のりは険しい状況が続いています。
その一方で、地域住民は困難な状況の中でも自らの力で復旧を果たすよう努力しています。例えば、自宅で仮設風呂を運営したり、廃材を利用した薪で銭湯を再開させたりと、たくましい姿が多く見られるようになりました。そうした自主的な活動の中、ある集落では未来の復興ビジョンを話し合う機会を設け、能登の人々の希望が拡がっています。
このような背景の中で、特定非営利活動法人HOME-FOR-ALLは「能登みんなの家」というプロジェクトを立ち上げています。これは、地元住民自身の思いや活動を基にした憩いの場の設置を目指しています。現在、珠洲市、輪島市、能登町の3つの地域で6棟の「みんなの家」を計画しています。その中の一つである「狼煙のみんなの家」が、日本財団の助成を受けて2025年に建設予定です。
地元の思いを反映した建築計画
「狼煙のみんなの家」は、運営をNPO法人奥能登日置らいが担い、設計はクライン ダイサム アーキテクツが手がけます。建築素材には、リサイクルされた能登瓦や下見板貼りが使用され、地域の伝統を重んじながらも未来を見据えた設計が施されます。この家は、集会所や食堂として機能し、地域の人々が集まり会話や交流を楽しむ場となることが期待されています。
地域の持続可能な自立を目指す
設計においては、ただの建物を作るのではなく、地域の文化や資源を生かしながら持続可能な形で運営できるような建築を目指しています。能登半島の自然環境に変わらず共生する形で、たとえばコンポストトイレや太陽光発電、井戸水の活用などを取り入れたオフグリッド施設として計画されています。これにより、地域の住人たちが自分たちの手で運営管理をする自立した拠点になることを狙っています。
みんなの家が持つ意義
「みんなの家」は、2011年の東日本大震災を受けて生まれたプロジェクトであり、被災地で人々が集まれる場所の提供を目指してきました。これまでに福島や熊本で多くの「みんなの家」が建設されており、その活動は全国の支援を受けて拡がっています。
能登半島の「みんなの家」はその流れを引き継ぎながら、地域の特性を反映し、文化を未来に繋げる場としての役割を担うことになります。各地に点在する6棟の「みんなの家」は、それぞれ異なる色と特徴を持ちながら、やがて珠洲市や輪島市、能登町の復興を促進する重要な拠点となることでしょう。
心の拠り所となるこれらの建物が完成し、地域住民と訪れる人々の交流の場となるその日を、私たちは楽しみにしています。再び人々が集い、未来について語り合える環境が整うことを期待するばかりです。