ネイチャーベースのカーボンクレジット創出を手がけるGreen Carbon株式会社が、株式会社エフ・シー・シーと連携し、フィリピン・ネグロス島において新たな水田メタンガス削減プロジェクトをスタートさせました。このプロジェクトは、間断灌漑(AWD)技術を活用し、より効率的な水田管理を実現し、環境への負荷を軽減することを目指しています。
本取り組みは、日本政府が推進する二国間クレジット制度(JCM)を活用して行われます。プロジェクトは初年度に100ヘクタールから始まり、最終的には最大25,000ヘクタールまでの規模で展開される予定です。約10年間で964,251トンの温室効果ガス削減が見込まれており、この成果は日本とフィリピン双方に利益をもたらすことになります。
プロジェクトの背景
Green Carbonは「生命の力で地球を救う」というビジョンを掲げ、東南アジアを中心に様々な環境プロジェクトに取り組んでいます。その中でも、森林保全や水田メタン削減、気候スマート農法の普及など多岐にわたる事業を展開しています。一方、FCCは長年自動車部品メーカーとしての経験を生かし、環境負荷の低減に努めてきました。この両者のパートナーシップは、地域社会と協力しながら持続可能な未来を実現するための強力な基盤となります。
ネグロス島の特性
ネグロス島はフィリピン中部に位置し、肥沃な土壌と安定した気候条件を備えています。米、サトウキビ、トウモロコシなどの農業が盛んな地域であり、水田は約6万ヘクタールが利用されています。しかし、これまでの集中的な水管理方法は、メタン排出や水資源の過剰使用といった問題を引き起こしていました。そこで、間断灌漑の導入は、これらの課題解決の鍵となると考えられています。
AWD(間断灌漑)の導入
間断灌漑は水田の水位を基に、定期的に水を入れ替えることで、水の使用量を削減する手法です。具体的には、AWDを用いることで1ヘクタールあたり年間5.03トンのCO₂eを削減でき、これは10年間で約96万トンに相当します。また、実証済みのデータによれば、水使用量が平均38%減少する一方で、収穫量は最大16%増加することが確認されています。これにより、農家にとっても経済的なメリットが享受でき、環境価値の向上も実現できます。
今後の展望
本プロジェクトは2026年の作付けに向けて、最初の100ヘクタールでスタートし、段階的に拡大する計画です。成功裏に進めば、他地域への展開も視野に入れており、AWD技術の普及を通じて、フィリピン国内外における気候変動対策の有効性も発信していく方針です。また、地域農家や大学との協力を強化し、持続可能な農業モデルの構築とともに、安定したカーボンクレジットの供給を目指しています。
まとめ
フィリピン・ネグロス島で、新たに始まるAWDを活用した水田由来のカーボンクレジット創出プロジェクトは、農業における環境負荷を軽減する可能性を秘めています。これにより、地域経済の発展と環境保全の両立を実現する先進的な試みが注目を集めています。