アジア太平洋地域の食品業界における動物福祉改善の実態と展望
先週発表された「畜産動物福祉に関するビジネスベンチマーク」(BBFAW)は、アジア太平洋地域の食品業界における動物福祉の進展と課題を浮き彫りにしました。評価対象は中国、日本、オーストラリア、ニュージーランド、タイの企業150社で、地域ごとの状況が整理されています。
食品企業の評価と取り組み
BBFAWでは、企業の動物福祉に関するポリシー、取り組み、実績を評価し、スコア付けを行います。2023年のデータによれば、アジア太平洋地域の平均スコアは9%であり、他地域に比べて低迷しています。特にアジア太平洋地域の企業の約90%が「ティア5」または「ティア6」に分類されており、動物福祉方針の公式整備が不十分であることが示されています。
課題と改善の余地
動物福祉をビジネス上の課題として認識していない企業も多く、不十分な法制度やステークホルダーからの圧力が背景にあると考えられます。特に最も重要な評価基準「パフォーマンス・インパクト」のスコアが4%であることが、企業の実態を物語っています。これは、倫理的な飼育や輸送に関する取り組みが進んでいないことを示唆しています。
Fonterraの成功事例
一方で、ニュージーランドのFonterraは注目に値する成果を上げています。Fonterraは、インパクト評価をEからBに引き上げ、ティアも4から3に改善するなど、動物福祉に対する取り組みでリーダーシップを発揮しています。これは、動物福祉に関する取り組みが浸透していない地域でも、実質的な改善が可能であることを示す良い例です。
今後の展望
BBFAWの報告書は、動物福祉に取り組む企業が増えている一方で、依然として多くの企業が不十分な評価にとどまっていることを示しています。特に企業におけるポリシーの整備や情報公開の強化が必要です。アジア太平洋地域では、食品生産が経済的にも文化的にも重要であり、その中で動物福祉への関心が一層高まっています。
今後の取り組み
Compassion in World Farming(CIWF)は、Fonterraの成功事例をもとに、アジア太平洋地域の企業に対し、動物福祉に関連した透明性の向上を促しています。企業の方針を改善し、動物福祉をビジネス上の重要な課題として認識させることが、今後の目標となるでしょう。これにより、企業は信頼を勝ち取り、レジリエンスを向上させることが期待されます。
まとめ
BBFAWの結果は、動物福祉の向上に向けて進展が見られる一方で、まだまだ多くの企業において改善が求められることを示しています。Fonterraのような成功事例を参考にしながら、イノベーションと倫理的な実践によって、アジア太平洋地域全体が動物福祉の面で新たなステージへと進むことが求められています。
今後もBBFAWや関連団体の活動に注目し、各企業が動物福祉に真剣に取り組む姿勢が必要です。