脳の発達における(プロ)レニン受容体の役割
最近、岐阜大学の研究グループが脳発達における(プロ)レニン受容体の重要な機能を明らかにしました。この発見は、胎生期における脳の形成過程において、ある分子が果たす役割についての理解を深めるものです。
研究の背景
(プロ)レニン受容体は、血圧を調節するレニン-アンジオテンシン系に関わるタンパク質として知られています。しかし、それが脳の発達にどのように影響するのかは不明でした。今回の研究では、この受容体の欠乏がどのように神経幹細胞に影響を与えるかを調査しました。
研究の成果
研究チームは、神経幹細胞における(プロ)レニン受容体の欠損が脳の構造異常や胎生期の致死を引き起こすことを示しました。具体的には、マウスモデルを用いて、(プロ)レニン受容体が神経細胞の分化や細胞死にどのように関与しているかを分析しました。結果として、細胞死の増加や脳内ミクログリアの活性化など、脳発達に対する重大な変化が観察されました。
これまでの研究では、(プロ)レニン受容体が心臓や腎臓においての機能に焦点が当てられていましたが、神経系における役割についての理解は深くありませんでした。この研究を通じて、(プロ)レニン受容体が神経幹細胞の分化に不可欠であることが明らかになりました。
今後の展望
本研究は、胎生期の脳形成における質の管理機能の重要性を示しており、神経発達障害や先天性脳疾患の理解をさらに深める可能性があります。今後は、髄鞘形成における(プロ)レニン受容体の役割をさらに探求する計画です。
共同研究者
この研究は岐阜大学の研究者に加え、筑波大学や東京女子医科大学、富山大学の教授たちと共同で行われました。また、本研究の成果は、2025年8月15日にザ・ジャーナル・オブ・バイオケミストリー誌に掲載される予定です。
この研究は、障害を持つ子どもたちの未来に向けた新たな希望を示すものです。生まれる前の脳発達に重要な因子を解明することで、今後の治療法や予防策に向けた意義深い手がかりを提供します。