企業のBCP策定意向、4年ぶりに5割に - スキル・人手・時間の3要素が障壁に -

2024年5月に帝国データバンクが実施した調査によると、企業のBCP策定意向は4年ぶりに5割に達したことが明らかになりました。これは、近年増加する自然災害やサイバー攻撃などのリスクに対する危機意識の高まりが背景にあると考えられます。

しかし、一方でBCPの策定を阻む大きな課題も存在します。調査では、BCPを策定していない企業の理由として、「策定に必要なスキル・ノウハウがない」「策定する人材を確保できない」「策定する時間を確保できない」といった回答が多く寄せられました。特に「スキル・人手・時間」の3要素が、企業規模を問わず大きな障壁となっていることが浮き彫りになりました。

BCP策定意向が高まる背景

近年、企業を取り巻く環境は大きく変化しています。2023年、能登半島地震では最大震度7を観測し、直接的な被災に加え、交通インフラや生活インフラの寸断による影響が長期化。企業の生産活動や消費活動に大きな支障をきたしました。また、同年6月には大手出版社に対する大規模なサイバー攻撃が発生し、主要サービスが停止に追い込まれる事態となりました。これらの出来事は、企業にとって、自然災害やサイバー攻撃などのリスクへの備えが不可欠であることを改めて示しています。

自然災害が最大の脅威

調査では、BCP策定意向のある企業に対して、事業継続を困難にするリスクについて尋ねたところ、71.1%が「自然災害」を挙げました。これは、地震や台風、洪水などの自然災害が、企業活動に大きな影響を与える可能性が高いことを示しています。

続く「情報セキュリティ上のリスク」では、サイバー攻撃による情報漏洩やシステム停止などが懸念されています。その他、「感染症」や「インフラの寸断」、「設備の故障」なども上位にランクインしており、企業は様々なリスクに備える必要性を感じていることがわかります。

人材確保とスキル習得が課題

BCP策定に向けた課題として、最も多く挙げられたのが「スキル・ノウハウの不足」でした。BCP策定には、リスク分析や対策立案、訓練など、専門的な知識や経験が必要となります。しかし、多くの企業では、これらのスキルを持つ人材が不足しているのが現状です。

さらに、人材の確保に加え、従業員全体の意識改革も課題です。BCPは、単に書類を作成するだけでなく、日々の業務に組み込み、全社員が理解し、実践していく必要があります。そのためには、社員教育や訓練などを通して、BCPに対する意識を高めていくことが重要です。

行政による支援と企業の意識改革が不可欠

企業がBCPを策定するハードルを下げるためには、行政による支援が不可欠です。具体的には、BCP策定に関する助成金制度の充実や、中小企業向けのコンサルティングサービスの提供などが挙げられます。

同時に、企業自身もBCPの重要性を認識し、積極的に取り組む姿勢を持つことが重要です。BCPは、事業の継続にとどまらず、企業価値の維持・向上にもつながる重要な取り組みです。

BCPは、未来への備え

企業にとって、BCPはもはや「あればいい」ものではなく、「必須」のものになりつつあります。自然災害やサイバー攻撃など、様々なリスクに備え、事業の継続と企業価値の向上を目指していく必要があります。

今回の調査結果を踏まえ、企業はBCPの重要性を再認識し、自社にとって最適なBCPを策定し、日々の業務に組み込んでいくことが求められます。

BCP策定、5割という数字の裏にある課題と展望

今回の調査結果では、BCP策定意向が4年ぶりに5割に達したことが明らかになり、企業における危機意識の高まりを感じます。しかし、同時に、スキル不足や人材不足といった課題も浮き彫りになり、BCP策定の道のりは決して平坦ではないことがわかります。

企業がBCP策定に躊躇する理由として、「スキル・ノウハウ」「人手」「時間」という3つの要素が挙げられます。特に、中小企業では、専門知識を持つ人材の確保や、日々の業務に加えてBCP策定に時間をかけることが難しいという現実があります。

しかし、BCPは単に企業の存続を守るだけでなく、従業員の安全確保、顧客への信頼維持、社会への責任を果たすという重要な役割を担います。これらの要素は、企業の持続的な成長に不可欠です。

そこで重要なのは、行政や業界団体による支援体制の強化です。中小企業に対して、BCP策定に関するノウハウ提供や人材育成プログラム、資金面でのサポートなどを充実させることで、ハードルを下げることが可能になります。

加えて、企業自身もBCPに対する意識改革を進める必要があります。従業員一人ひとりが、BCPの必要性を理解し、日々の業務の中でリスクへの意識を高めることが重要です。

BCPは、企業が未来に向けて持続可能な成長を遂げるための重要な基盤となります。企業が積極的にBCPに取り組み、万が一の事態に備えることで、より強固な組織体制を築き、社会への貢献度を高めることが可能になります。

今回の調査結果は、企業がBCP策定に真剣に取り組む必要があることを示唆しています。今後は、行政、企業、そして個人が協力し、より安全で安心できる社会の実現に向けて進んでいく必要があると感じます。