無線通信の革新
2026-08-26 14:10:16

無線通信の新時代を切り開くデジタルツイン技術の革新

無線通信の新時代を切り開くデジタルツイン技術の革新



2023年、京都大学大学院情報学研究科の原田博司教授の研究グループは、自動運転支援や交通事故の低減を目的に、V2X (Vehicle-to-Everything)環境における無線伝送の特性を評価するための新たなデジタルツイン技術を採用したワイヤレスエミュレータを開発しました。この技術により、実空間に無線機を設置することなく、実環境の無線伝送特性を評価できるようになりました。

1.背景と課題



最近、5G移動通信システムを利用した多様なアプリケーションの研究が進められています。特に、自動運転を支援し、交通事故を減少させることを目的としたV2X通信は注目されています。V2Xは車両間での情報のやり取りを通じて、交通事故の防止や交通の流れをスムーズにすることをうたっています。しかし、5.9 GHz帯で行う屋外実験には、詳細な干渉評価や周波数の共有など、膨大な時間と費用がかかります。さらに、交通環境は多様であり、それぞれでの評価が求められるため、実環境での実証実験の難しさが課題となっています。

このような課題に対処するため、ワイヤレスエミュレータの利用が期待されています。これは、地形データを基にして実環境を仮想空間に再現し、無線通信の条件をシミュレーションすることで、実際の環境と近い電波伝搬特性を導出できる手法です。

2.研究開発の概要



開発されたワイヤレスエミュレータは、3つの主要なコンポーネントから構成されています。まず、レイトレーシング電波伝搬シミュレータは、送信機と受信機の位置情報、利用する周波数や送信電力に基づいて電波の伝搬を3D地図上でシミュレートします。次に、チャネルインパルス応答生成部では、シミュレーションから得られたデータを元に、ネットワークの遅延やチャネル状態を考慮して応答を生成します。そして最後に、フェージングエミュレータ部により、実験室内での再現が可能になります。

これらの機能はすべてPC上で動作するソフトウェアとして提供され、商用のフェージングエミュレータと連携することで、屋外での実験なくして環境評価を実現します。

3.研究開発成果の評価



このワイヤレスエミュレータの有効性を検証するため、実際の交差点環境における5 GHz帯の屋外実験と比較を行いました。特に、中心周波数5.25 GHzの5G New Radio(NR)信号を使い、送信機を交差点に設置し、受信機は移動体に搭載しました。二つのルート(右折及び直進)のデータを収集し、信号電力や遅延スプレッドを評価しました。出てきた結果は、実際の環境における物体の影響を考慮しつつ、両者の特性には高い相関があることが示されました。

特に、Block Error Rate(BLER)の特性では、実際の条件下においても要求値を満たす受信可能エリアが確認され、ワイヤレスエミュレータを利用することで5G NRの物理層の特性を精度高く再現できることが実証されました。

4.今後の展望



このワイヤレスエミュレータの開発により、現実の無線環境の模擬実験が進められるようになり、事前に通信機器の最適な配置などを検討できるようになります。また、多様な環境を想定した実験が容易になることで、V2Xを含む無線通信システムの開発が一層効率化されることでしょう。

さらに、同研究成果は8月27日に開催される電子情報通信学会の無線通信システム研究会で発表される予定です。今後の進展にぜひご注目ください。

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