伝統の甲冑技術と新たな挑戦
私たちが手がける「甲冑」は、金工や木工、京織物、組紐、皮革工芸といった日本独自の技術が結集した究極の伝統工芸品です。その製作には約5000の工程があり、各職人の情熱と想いが詰まっています。現代では大量生産が主流となり、手仕事の価値が薄れつつある中、私たちは「一生に一つの宝物」を作り上げる喜びをかみしめています。私たちの目指す先には、多くの人々の笑顔と感動があります。
現代の課題と伝統技術の継承
しかし、自社の取り組みには様々な課題が立ちはだかります。節句文化の衰退、少子化、そしてマンション住まいの普及によって、甲冑を飾る伝統が忘れられそうになっています。このような中、私たちはいかにしてこの美しい文化を未来に残していくかを自問自答し続けました。幼いころの雄々しい成長を願う想いとともに、伝統工芸を保存し続ける使命感に押しつぶされそうになることもありました。
その現状を打破するため、業界外の人々とも積極的に意見を交わし、新たなアイデアを模索することでこれまで思いつかなかった可能性を引き出しました。
『ボトルアーマー』の誕生
その中で、株式会社ZIPANGとのコラボレーションから誕生したのが『ボトルアーマー』です。当初の目的はボトルキープでしたが、海外向けのワインボトルに合わせたデザインで展開したところ、2018年にはOMOTENASHI Selectionの金賞を受賞しました。販売の枠を広げ、空港での取り扱いも始まりました。
女性向けの新製品、サムライボトル兜
続いて、女性にも手に取りやすいカラフルなデザインの『サムライボトル兜』が登場しました。これもまた国内外で様々なコンテストで受賞し、特に2016年の埼玉県伝統工芸品等新製品開発コンテストでは高い評価を得ました。コンパクトで持ち運びやすく、斬新なアイデアが詰まった製品です。
時計による新たな可能性
甲冑はもはや実生活で着用することはありませんが、形を変えて時計として人々の力になれるとも考えました。長い時間をかけて完成させた『甲冑時計 伊達政宗公』は、伝統的な技術の新たな可能性を広げる作品となりました。
未来に向けた新たな挑戦
こうした様々な挑戦は平坦ではありませんでしたが、時間と多くの人々の協力のもと、成り立っています。感謝を込めた恩返しとして、夢や希望を持って今後も進んでいくつもりです。インバウンド需要の回復と共に、空港や百貨店での販売を拡大し、海外市場への直接販売も視野に入れています。
さらにアニメやゲームとのコラボレーションを実現したいと思っています。実生活での実需が減少している中でも、受け継ぎたい文化や技術を次世代にどうバトンを渡していくか、まだまだ試行錯誤を続けています。挑戦する心を忘れず、より良い製品を提供するために伝統技術を継承しつつ、独自の手法と精緻な技術を磨いていきます。
創業者であった祖母、先代の父、そして私へと引き継がれてきた夢を実現するため、甲冑で世界中を笑顔にするという目標に向かって進み続けます。