NTTグループとメタウォーターによる上下水道業務の改革
NTTグループとメタウォーター株式会社は、上下水道施設における保守点検業務の自動化を目指す実証実験を開始しました。これは現在の国内上下水道事業が直面している多くの問題—財政難や技術者不足、老朽化に対応するための重要な取り組みです。特に自治体の技術者不足は深刻であり、効率化が急務とされています。
背景と課題
日本の上下水道事業は、自治体の限られた財政状況や技術者の不足、施設の老朽化といった複数の課題を抱えています。2023年6月には政府が新たな公民連携方式、すなわち「ウォーターPPP」を発表し、その導入を進めています。これにより、民間企業の役割が拡大することが期待されていますが、一方で、保守点検業務を担う現場作業員が数百〜数千に及ぶ機器の点検を行う中で、技能や経験に頼る部分が多いため、効率的なサポートが必要不可欠です。
長年にわたり公民連携事業に取り組んできたメタウォーターと、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に実績のあるNTTグループが組むことで、次世代の持続可能な水インフラの実現を目指します。
取り組みの概要
1. 情報通信ネットワークの最適化
上下水道施設は、広大で複雑な環境にあるため、効果的な情報通信ネットワークの構築が不可欠です。NTTグループは多様なネットワークソリューションを提供し、メタウォーターは「WBC(Water Business Cloud)」と「オペレーションサポートセンター」(OSC)を活用して理想的なネットワーク環境を整備します。これにより、効率的なデータ収集と処理を実現し、保守点検業務自動化の基盤を築きます。
2. 保守点検業務の自動化
情報通信ネットワークを基盤に、ネットワークカメラやIoTセンサー、そして生成AIを駆使して、現場作業員の手を介さない保守点検業務の自動化が進められます。AIが異常を検知した場合には即座に警報が発せられ、作業員やメタウォーターのOSCに通知される仕組みも整っています。このアプローチにより、業務フローの見直しやスタッフ教育なども視野に入れた持続可能な施設運営が期待されます。
実施場所と期間
本実証実験は、宇都宮市上下水道局の清原水再生センターで行われ、2025年10月から2027年3月までの予定です。メタウォーターは同センターにおいて維持管理業務の委託を受けており、本実験の成果は事業の質の向上を図るための重要なデータとなります。
今後の展望
両社は、今回の実証実験を通じて得られた知見をもとに、上下水道施設におけるネットワーク最適化や保守業務の自動化の実用化に向けてさらに進めていく方針です。自治体のインフラ運営に関わる課題に対し、具体的な解決策を提供することで、地域貢献にも寄与していくでしょう。
この仕組みが実現すれば、より持続可能で安定した水インフラの提供が期待され、地域住民の生活向上にも大きく寄与することができるでしょう。