児童生徒の自殺対策、1人1台端末の活用推進を求める提言!
特定非営利活動法人OVAは、7月17日に文部科学省で記者会見を実施し、児童生徒の自殺対策に関して、1人1台端末の活用推進を求める提言を発表しました。
会見には、特定非営利活動法人OVA代表理事の伊藤次郎氏、特定非営利活動法人あなたのいばしょ理事長の大空幸星氏、北星学園大学心理学科専任講師の髙橋あすみ氏の3名が登壇しました。
警察庁の統計によると、2023年の小中高生の自殺者は513人と、過去最多だった2022年の514人から高止まりしています。
国は「こどもの自殺対策緊急強化プラン」を策定し、文部科学省も児童生徒からのSOSを早期に把握するため、1人1台端末を活用した対策を求める通達を各都道府県の教育委員会に出しています。
しかし、現状では1人1台端末を活用した対策は十分に進んでいるとは言えない状況です。
そこで、OVA、あなたのいばしょ、北星学園大学は、国や教育委員会等に向けて、1人1台端末を活用した自殺対策の更なる推進を求める提言を行いました。
3つの提言内容
1. OVA代表理事 伊藤次郎氏
伊藤氏は、1人1台端末を活用した「心の健康観察」ツールが、生徒の同意なく教育委員会に通知が行われたり、画面が真っ暗になったりするなど、監視・制限的な仕組みが導入されている現状を指摘しました。
また、現状ではツールの多くが有償であり、予算の有無によって導入できるかが左右され、児童生徒の「生きるため」の支援に地域間の格差が生じていることも課題として挙げました。
伊藤氏は、1人1台端末を通して「死にたい」など自殺に関連した検索行動を、問題行動として捉え、監視・制限的な仕組みの導入を進めるのではなく、SOSのサインとして捉え、「生きる」を支える仕組みとして活用の推進が進んでいくことを訴えました。
2. あなたのいばしょ理事長 大空幸星氏
大空氏は、チャット相談における個人情報取得のガイドラインが定まっていないために、警察・児童相談所への通報に時間がかかってしまう現状を指摘しました。
ガイドラインが規定されることで、より個人情報取得がスムーズとなり、警察・児童相談所との連携が推進されることを期待していると述べました。
また、デジタルネイティブ世代のこどもにとって、電話で相談するという手法はあまりなじみがありません。そのため、GIGAスクール構想による1人1台端末にSOSフィルターを実装し、検索ワードによってチャット相談窓口を伝えるアウトリーチの手法を用いることで、こどもが相談しやすい環境作りに寄与できることと考えていると語りました。
3. 北星学園大学心理学科専任講師 髙橋あすみ氏
髙橋氏は、自殺に関するメディア報道・発信の課題として、予防対策を含む自殺をテーマとした報道・発信を行う組織・個人は、自殺予防に関する専門家や団体と議論・協働を進めていくべきだと主張しました。
また、児童・生徒がメディアの発信内容に関心を持つことや、インターネットを使用した自殺に関連する行動を示した場合は、児童・生徒のSOSと捉えて、必要な対策を行うべきだと訴えました。
髙橋氏は、自殺予防に求められるのは、制限や禁止ではなく、活用することだと強調し、学校では端末の使用法についての積極的な議論を行う必要があると述べました。
1人1台端末の活用は自殺対策の重要な一環
今回の提言は、1人1台端末が自殺対策において重要な役割を果たせることを改めて示すものです。
1人1台端末を活用することで、児童生徒の心の状態を早期に把握し、適切な支援につなげることが期待されます。
文部科学省は、今回の提言を受け、自殺対策を目的とした1人1台端末の活用状況について、実態調査(モニタリング)の実施を検討していく必要があるでしょう。
関連情報
- - 特定非営利活動法人OVA: https://ova-japan.org/
- - 特定非営利活動法人あなたのいばしょ: https://anata-no-ibasyo.jp/