防衛分野に革命をもたらす秘密暗号計算技術の協業
2023年10月、株式会社スペースデータとキオクシアから分社化したEmotionX株式会社が防衛・安全保障分野における協業に関する覚書を締結しました。この覚書に基づいて、両社は新たな情報基盤の構築に向けて検討を進めていくことになります。
背景
近年、生成AIやフィジカルAIの進展により、防衛や安全保障の分野において大量のデータが意思決定の中核となる時代が到来しました。衛星データやデジタルツインを活用したシミュレーション、AI解析などの技術は、これまでの防衛戦略における情報の利活用を一変させています。しかし、従来の暗号技術はデータを分析する際に一度復号(平文化)が必要となるため、この過程における情報漏洩リスクが残されていました。
また、量子コンピュータの実用化によって、既存の暗号手法の脆弱性も挙げられており、機密情報を守りながら効率的なデータ活用を図るセキュアな情報基盤の構築が急務とされています。そのため、本協業の意義は非常に大きいと言えます。
具体的な協業内容
本覚書に基づき、両社は以下のような分野で共同検討を進めていきます。
1.
完全準同型暗号の利用 - この技術を駆使したセキュアなデータ分析基盤の共同開発。
2.
技術実証 - フィジカルAIやデジタルツインへの秘密暗号計算の適用に関する研究。
3.
情報セキュリティの向上 - 秘密暗号計算技術を活用した高度な秘密保護体制の確立。
4.
共同提案の検討 - 政府機関や防衛関連企業への提案活動。
次世代暗号技術「完全準同型暗号」とは?
完全準同型暗号(FHE)は、データが暗号化されたままで計算や分析ができる技術です。この技術の最大の利点は、機密性が極めて高いことですが、暗号文のデータ量が通常の数千〜数万倍になるため、計算時間とのトレードオフがあるという実用化の壁も存在しました。EmotionXでは、独自のアルゴリズムと専用半導体の開発を行うことで、この壁を乗り越えています。具体的には、従来約150分かかる処理を約10分に短縮し、更には今後数秒以内に処理可能なチップ開発を目指しています。
スペースデータの取り組み
スペースデータは、地球と宇宙をつなぐフィジカルAIやデジタルツイン技術を基盤に、政府機関との連携を強めています。防衛・安全保障に特化した事業を進めており、本協業はその一環として位置付けられています。特に、世界最高水準の国産暗号技術を防衛分野で活用し、機密情報のセキュリティを高めることを目指しています。
将来的な展望
この協業を通じて、両社は防衛分野における情報セキュリティと秘密保護の向上を狙います。また、将来的には陸・海・空・宇宙そしてサイバー空間を網羅した情報活用の実現を視野に入れています。フィジカルAIとデジタルツインの技術、および国産用途の次世代暗号技術の統合により、より安全な国の防衛を実現することが期待されています。
EmotionXとスペースデータの紹介
EmotionXは、FHE技術を核としてさまざまな分野でのデータ活用を目指して設立されたスタートアップです。キオクシアの先端技術研究所から生まれた同社の技術は、金融、ライフサイエンス、宇宙、半導体など幅広い領域で安全かつ効率的なデータ利用を追求しています。
一方、スペースデータは宇宙とデジタル技術の融合による新たな社会基盤の構築に挑んでおり、デジタルツイン技術を駆使した柔軟な情報環境の提供を目指しています。この協業がもたらす可能性は、防衛・安全保障の分野においてますます重要性を増すことでしょう。