日本式コールドチェーン物流の国際標準化が実現、海外展開を加速へ
国際規格ISO31512発行の意義とその背景
2023年12月6日、国際標準化機構(ISO)において、日本が中心となり開発してきた国際規格「ISO31512」が発行されました。この規格は、企業間取引におけるコールドチェーン物流サービスの標準化を目的とし、特にアジア諸国の需要に応える内容となっています。
1. コールドチェーン物流の急成長
近年、アジア経済の成長に伴い、冷蔵・冷凍食品の流通量が急激に増加しています。また、食生活の多様化が進み、質の高いコールドチェーン物流への需要が高まっていますが、一方で一部の国では温度管理が不十分な状況が続いています。このため、適切なコールドチェーン物流網の構築が求められています。
このような現状を受け、日本は2021年に「総合物流施策大綱」を決定し、自国の高品質なコールドチェーン物流サービスの国際的普及を重要施策と位置付けてきました。
2. 日本の取り組みの舞台裏
日本では、物流標準化の推進に向けた連携が進められてきました。平成28年から「我が国物流システムの国際標準化等の推進に関する連絡検討会」が設置され、国土交通省を中心に業界団体や関係省庁が一丸となって標準化に取り組んできました。これにより、過去には小口保冷配送サービスの国際規格ISO23412や日本式企業間コールドチェーン物流サービスの民間規格JSA-S1004が発行されています。新たに設置された技術委員会では、日本が議長国としてコールドチェーン物流の規格作成に尽力してきました。
3. ISO31512発行の意義
ISO31512は、企業間取引のコールドチェーン物流の温度管理に関する要求事項を設けた規格であり、これが国際的に普及することで、日本の物流業者の品質が適切に評価されることとなります。これにより、国際競争力の向上が期待され、日本の農林水産物や食品の輸出拡大にも寄与すると考えられます。
4. 今後の展開と期待
今後、アジア諸国を中心にこの国際規格の普及を推進し、コールドチェーン市場の健全な育成と拡大に貢献していく所存です。また、国土交通省はオールジャパン体制でさらなる取り組みを続け、国際標準の普及を図っていきます。
この新しい国際規格がもたらす変化は、単なる物流の効率化に留まらず、日本の食品産業全体に大きな影響をもたらすと考えられています。各国の状況に対応しながら、日本の高品質なコールドチェーンサービスを世界に広めていくことは、今後の国際競争においても重要な要素となるでしょう。