AI技術を活用したカーボンナノチューブ分散プロセスの革新と期待
AIが開くカーボンナノチューブ分散プロセスの新たな地平
近年、カーボンナノチューブ(CNT)が持つ優れた特性は、タッチパネルや太陽光パネルなど、さまざまなデバイスの開発において注目を集めています。特に、CNTを用いた薄膜の透明導電膜はその応用範囲が広がっており、新しい製品開発に貢献しています。そこで、国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)は、高品質のCNT分散液を生成するための新たな手法を開発しました。この手法では、AI技術を活用し、超音波処理に頼らない高品質な分散プロセスを実現しています。
分散プロセスの課題
CNTの優れた導電性を生かしたデバイスの製造過程では、特にウェット法が用いられることが一般的です。この方法は、CNTを溶媒や分散剤とともに液体に分散させ、そこから膜状に成形するプロセスです。しかし、CNTがバンドルとして束ねられた状態で存在し、これをバラバラに分散させることは非常に難しい問題です。従来の手法では、超音波処理が必須とされ、この処理が行われることでCNTが欠陥を抱えたり、結晶性が損なわれるリスクがありました。
AI技術と分散条件の最適化
そこで、産総研の研究チームは、機械学習や分子動力学シミュレーション、溶解度パラメーターの解析を駆使し、分散条件を合理的に最適化する手法を開発しました。この新たな手法では、超音波処理を使用せず、CNT本来の性能を維持したまま分散できることが特徴です。具体的には、27種類の溶媒および分散剤を用いて実験を行い、それらの成果を解析して、CNTの高い分散性を引き出すための溶媒を選定しました。
高性能な透明導電膜の実現
この手法を用いることで、産総研はウェット法においてドライ法に匹敵する高い性能を持つCNT透明導電膜の製造に成功しました。この透明導電膜は、光透過率が90%であり、非常に優れた導電性を示しています。これにより、印刷や塗布などの特徴を持つ低コストで大面積な膜製造に対する新たな可能性が広がります。
今後への期待
研究開発の成果は産業分野での実用化に向けた取り組みが進展しており、エネルギー効率や環境への配慮が求められる中で、CNTのさらなる応用が期待されています。次世代電池材料や高性能透明導電膜の社会実装を目指し、今後も多くの企業や研究機関との連携を進めることが重要です。この研究は2026年1月21日発行の『Advanced Functional Materials』に掲載予定で、広範な研究への応用が期待されています。
結論
AI技術を駆使した新たなCNT分散プロセスの開発は、材料研究と製造業における地平を広げる可能性を秘めています。これまでの課題を克服し、透明導電膜の高性能化を実現することで、将来的には様々なテクノロジーの基盤となることが期待されます。カーボンナノチューブに期待される未来について、今後も目が離せません。