膵がんの新たな診断方法
膵がんの早期発見と効果的な治療は、医療の最前線における大きな課題です。このたび、札幌東徳洲会病院医学研究所、旭川医科大学、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所の研究チームが共同で、膵がんの主要なドライバー変異を検出するための新しいアッセイ法を開発しました。この方法は、2つの6色マルチプレックスデジタルPCRを駆使し、より高感度かつ低コストで高精度な診断が実現されたことが特徴です。
この新しい解析手法は、膵がんに関連するKRASおよびGNAS遺伝子のホットスポット変異を対象に構築されました。特に「PlexScreen-dPCR」と「PlexID-dPCR」の2つの方法が開発され、それぞれ異なるアプローチで変異を高感度に検出することが可能です。PlexScreen-dPCRは、ターゲット領域内の変異を網羅的にスクリーニングします。これにより、0.03~0.06%と微量な変異を捉える高感度が実証されました。一方、PlexID-dPCRは、14種類の代表的な変異を特定できる特化型アッセイとして設計されています。
研究の概要
本研究では、膵がんの早期発見を目指し、少ない反応数で多くの情報を得ることができる6色マルチプレックスデジタルPCRアッセイを設計しました。この手法は、通常の大規模シーケンスと比較して、迅速かつ効率的に結果を得ることができるため、臨床応用が期待されます。特に、リキッドバイオプシーや断片化されたDNAサンプルでの活用が可能であり、このことが診断精度の向上につながるでしょう。
技術的な背景
膵がんは、発症が進行するため、早期発見の技術が急務です。近年、シーケンシング技術の発展により、広範囲な遺伝子解析が可能となりましたが、高コストや結果が得られるまでの時間が早期診断の妨げとなっていました。それに対し、デジタルPCR(dPCR)は微量の変異検出を高感度に行える手法として注目を集めています。新たに導入された6色検出dPCRシステムは、解析の効率を飛躍的に向上させたとされています。
研究成果と今後の展望
PlexScreen-dPCR法では、13種類のKRASの変異とGNASの変異を効果的に同定することができました。研究では23検体の膵がん由来FFPE組織および体液を使用し、これまでのデータと高い一致率を見せています。また、PlexID-dPCR法も同様に高い相関関係が確認され、信頼性の高い診断ツールとして位置付けられることが期待されています。
今後、これらのアッセイが膵がんの診断用具として広がることが予想されます。様々ながん種に対応したデジタルPCR遺伝子パネルの開発が進めば、個別化医療の実現にも寄与するでしょう。特に、リキッドバイオプシーによる定期的な診断が可能になることで、患者の治療選択肢が広がることは確実です。
用語説明
デジタルPCR(dPCR)は、従来のPCRに比べてはるかに高い感度でDNAやRNAの定量を行う技術です。試料を多くの小さな反応区画に分割し、各区画で独立したPCR増幅を実施することで、個々の分子をカウントできます。この技術は、低頻度の変異が含まれるサンプルでの運用にも非常に適しており、がん診断や感染症モニタリングにおいてますます重要な役割を果たしています。
この新しいPCR法の採用により、膵がんの診断がどのように進化していくのか、今後の展開に期待が寄せられています。