FLOSFIA、酸化ガリウムパワー半導体の量産化技術を確立
京都市に本社を構える株式会社FLOSFIAは、世界で初めて酸化ガリウム(α-Ga₂O₃)パワー半導体の量産化技術を大幅に前進させました。特に、4インチウェハの製造技術において実証を完了し、製品信頼性の向上対応も果たしました。この技術進展は、グローバルなコスト競争が激化する中、日本の半導体産業が直面する構造的課題を解決する大きなステップとなります。
競争が激化するSiC市場
現在、次世代のパワー半導体市場ではSiC(炭化ケイ素)産業が主流ですが、EV(電気自動車)需要の減速や中国のメーカーによる急激な投資により価格競争が激化しています。技術力において優位性を保つ日本メーカーとはいえ、構造的な高コスト体質が災いし、競争力を失いつつあるのが現状であり、日本の半導体産業の「第二の敗北」が懸念されています。
新素材パワー半導体市場の急成長
それでも、新素材を利用したパワー半導体市場は今後急成長が見込まれています。生成AIの普及によりデータセンターの電力消費が急増し、環境への配慮が求められる今、電力変換効率を大幅に向上させることが急務です。シリコン以外のパワー半導体市場は今後10年間で年平均成長率約20%を記録し、2035年には市場規模が約3兆5,000億円に達すると予想されています。
量産化成功の成果
FLOSFIAは量産化の重要な技術的ブレークスルーを実現しました。具体的には、4インチウェハの製造技術を2025年までに実証する予定を前倒しで達成したことが大きな成果です。この技術により、従来のSiC基板に対する利点が突出しており、広く供給可能なサファイア基板を使用することで基板コストを最大50分の1まで削減できます。このように、コスト競争において圧倒的な優位性を確立しています。
1. 結晶成長コストの低減
FLOSFIAのミストドライ®法を用いた結晶成長装置は、従来のSiC結晶成長手段に比べ、設備投資を大幅に削減することが可能です。
2. 前工程の効率化
既存のGaN-LED工場やSiC工場とのパートナーシップにより、プロセス装置の効率的な流用が可能で、量産準備が加速される見込みです。
信頼性の向上
FLOSFIAは、α-Ga₂O₃デバイスに関わる信頼性課題を解決しました。特に、表面処理からくる信頼性のばらつきが課題でしたが、原因を特定し、信頼性に関する基準をクリアできる道筋がつきました。この技術により、600V/10Aクラスのデバイスでも信頼性が保障され、量産性の向上も達成しています。
量産体制の整備
今後は、MOSFETや次世代ダイオードであるJBSの量産技術開発を加速し、早期市場投入を目指します。これによって日本の半導体産業の競争力を再強化することが期待されています。
持続可能な未来へ向けて
FLOSFIAは「半導体エコロジー®」というコンセプトのもと、エネルギーや資源の無駄をなくし、持続可能な社会の実現に寄与しています。本研究の一部は、NEDOによる支援を受けて実施されています。
企業情報
- - 会社名: 株式会社FLOSFIA(フロスフィア)
- - 所在地: 京都市西京区御陵大原1番29号
- - 設立日: 2011年3月31日
- - URL: FLOSFIA公式サイト
- - 代表取締役社長: 四戸孝
この新たな技術革新が日本の半導体産業に新たな光をもたらすことを願っています。