映画館で感じるオペラの新たな潮流
2024年3月28日、映画館で楽しめるオペラ『ホフマン物語』が公開されます。この作品は、英国ロイヤル・オペラ・ハウスで上演されている幻想的なオペラを大スクリーンで体験できる絶好のチャンスです。「英国ロイヤル・バレエ&オペラ in シネマ」シリーズの一環として特に注目されているこの作品は、名演出家ダミアーノ・ミキエレットによるポップかつ奇抜な舞台が特徴で、国際色豊かな歌手陣によるパフォーマンスも見どころです。
『ホフマン物語』は、”オペレッタの王様”と称されるフランスの作曲家ジャック・オッフェンバックの生涯最後の作品です。1881年にパリで初演され、その後も多くのバージョンが上演されてきました。それらは全て詩人ホフマンが失った恋の想い出を振り返るというストーリーを共通点としながらも、オッフェンバック自身が「幻想オペラ」と名付けたことから、様々な解釈が可能な作品です。
石川了氏、音楽・映画・舞踊ナビゲーターは本作の演出について、ミキエレットのアプローチがいかに挑発的であるかを説明しています。彼は「ポップで奇抜、ちょっとダークな幻想的ステージが見どころ」と評し、ホフマンが過去の恋を振り返ることが、どのように彼の詩作に新たな希望を与えるかを描き出すことがこの物語の魅力であると述べています。
物語は、うらぶれた詩人ホフマンが酒場で酒を飲みながら、かつての恋愛を語る形で進行します。彼は機械人形オランピア、元バレエダンサーのアントニア、高級娼婦ジュリエッタへの恋を振り返ります。これらのエピソードは、ホフマン自身の成長や挫折を象徴するもので、鑑賞者に深い共感を呼び起こします。特に印象的な点は、ホフマンが彼の恋を振り返る過程で自分自身を再発見し、人生に新たな光を見出す様子です。
メインキャストには、ペルー出身のスーパーテノール、ファン・ディエゴ・フローレスがホフマンを演じます。その歌唱力と演技はもちろんのこと、彼が多様な役柄を演じ分ける姿には目を見張るものがあります。また、悪役リンドルフをはじめとするキャラクターには、イタリアの人気バスバリトン・アレックス・エスポージトが参加。さらに、国際的な実力を持つ歌手が揃い踏みで、各キャラクターが持つ魅力を引き出してくれます。
石川氏はまた、この作品を映画館で楽しむことの特別さにも言及しています。「映画館の迫力のスクリーンと音響空間で楽しむのは、英国ロイヤル・バレエ&オペラの醍醐味の一つ」と述べ、キャストたちの素晴らしいパフォーマンスがどれだけ迫力を持っているかを強調しています。この特異な体験を通じて、近代オペラの新しい形に気づかされることでしょう。
映画『ホフマン物語』を開幕する今回は、音楽家オッフェンバックが描く暗い運命と明るい希望の交錯が物語となり、観客を魅了することでしょう。ダミアーノ・ミキエレットによる新たな挑戦として、ぜひ劇場でこの作品を味わっていただきたいと思います。
上映は3月28日から4月3日までの1週間限定で、TOHOシネマズ 日本橋などで行われます。興味のある方は、ぜひこの貴重な機会をお見逃しなく!