幕末期の熊本藩欠落者の実像を探る
令和8年3月30日、熊本大学工学部にて、同大学永青文庫研究センターの今村直樹准教授による記者発表が行われました。この発表では、幕末期の熊本藩における欠落者の実像についての研究成果が詳しく報告されました。
研究の背景
今回の研究は、幕末期の熊本藩による「口書」と呼ばれる細川家文書を基に行われました。これらの文書は、藩内外で発生した事件や犯罪に関する被疑者の供述調書が集められたもので、その中にはさまざまな人々の心情や状況も記されています。特に、幕末の激動の中で欠落した藩民の実態を探ることが目的とされています。
幕末における欠落者の増加
今村准教授によると、幕末期の熊本藩では、京都の警衛を命じられたことから、多くの武士が上京し、その従者として武家奉公人が多数上京した結果、欠落者が急増しました。「欠落」とは無断で逃亡したり、失踪したりすることを指します。調査によれば、欠落者の多くは日雇い労働で生計を立てる一方、力士や押借りなど治安を悪化させる事例も確認されました。
事例の紹介
特筆すべきは、武士に取り立てられるために江戸へ出奔した百姓や、大坂で欠落し新選組に入隊した郷士の例です。前者は水戸徳川家から武士にされると勧誘され、後者は遊郭でのトラブルから脱出するために新選組に参加しました。これらの事例は、幕末の社会構造や人々の生き様を如実に物語っています。
今後の展望
今村准教授は、本研究によって幕末期の政治的変動と庶民の生き方との関連が明らかになったと語ります。この研究は政治史に特化しているわけではありませんが、当時の政治的背景と欠落者の動向は密接に関連しており、その理解を深める上で重要です。
「口書」には欠落者以外にも多くの事件や犯罪に関する供述が収められており、今後はこれらのデータを基にさらなる研究を進める予定です。本研究の詳細は、2026年3月末に発行される『人文科学論叢』に掲載される予定です。
この研究は、幕末期の社会に生きた人々の多様な背景や生きざまを再評価する重要な一歩となるでしょう。各報道機関からも多くの質問が寄せられ、盛況となった記者発表は、研究への関心の高さを示しています。