セルロースナノファイバーの新たな安全性評価が公開される
国立研究開発法人 産業技術総合研究所と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、最新の安全性評価書「セルロースナノファイバーの安全性評価書-2025-」を発表しました。この評価書は、現在進行中のNEDO事業「炭素循環社会に貢献するセルロースナノファイバー関連技術開発」の成果を基にしており、CNF(セルロースナノファイバー)の安全性に関わる重要な情報を集約したものです。
CNFの魅力と市場への期待
セルロースナノファイバーは植物由来の軽量で高強度な素材であり、環境への影響を抑えつつ高性能を実現することが可能です。その製造は、木材を原料とし、大気中の二酸化炭素を吸収し固定しているため、カーボンニュートラルな材料としての期待も高まります。しかし、ナノ材料であるがゆえに、安全性の確認が市場における受け入れの鍵となります。特に最近では、国際的にナノ材料の安全性が厳しく見直されています。
安全性評価書の内容
新しく公開された安全性評価書では、動物試験や細胞試験から得られたデータを基にして、ヒトへの健康影響に関する情報が整理されています。特に、第2章では発がん性や遺伝的障害のリスクを確認する遺伝毒性試験の結果が示されており、第3章では繊維状物質が引き起こす可能性のある中皮腫についての知見が掲載されています。第4章から第6章では、それぞれ吸入、経皮、経口の暴露による影響が説明されており第7章では、実際の作業環境におけるCNFの排出・暴露評価事例もまとめています。
また、環境影響に焦点を当てた第8章および第9章では、水生生物への影響や生分解性についての知見も含まれています。これらの成果により、CNFがどのように環境に配慮した加工が可能かをさまざまな角度から示しています。
今後の展望
この評価書は、2022年に公開された以前の評価書の更新版で、新たに得られた研究成果が追加されています。今後、東京ビッグサイトで開催される「nano tech 2025」において、NEDOブースでの展示やセミナーを通じて、広く情報発信が行われる予定です。また、継続的にCNFの安全性に関するデータ収集と解析を進め、さらなる評価書の更新も行う計画です。
今回の公開により、CNFの安全性に関する情報がより充実し、関連事業者が積極的に応用開発を行いやすくなります。また、CNFの普及が進むことにより、持続可能な社会の実現に寄与できるでしょう。
新たに発表された「セルロースナノファイバーの安全性評価書-2025-」は、産業界が今後の材料選定や製品開発において、安全で環境に優しい選択をするための重要な基盤となることが期待されます。