リクルートの創業者、江副浩正の名は、賛否両論を呼ぶ人物として歴史に刻まれています。2023年10月29日に新潮社から刊行される大西康之氏の評伝『起業の天才!江副浩正8兆円企業をつくった男』は、彼の波乱に満ちた人生と経営者としての業績を浮き彫りにします。江副はリクルートを創業し、時価総額8兆円を誇る企業を築き上げ、その一方で戦後最大の疑獄事件とされるリクルート事件を引き起こしました。彼の経営手法は、一見すると問題を抱えていましたが、実は時代を先取りしたインターネット社会を予見し、日本型経営に革新をもたらす試みでもありました。
リクルート事件は、江副が未公開株をバラ撒いたことで引き起こされたもので、この行為が数多くの人々に巨額の富をもたらしました。しかし、江副の行動は単なる倫理の欠如ではなく、彼が「次世代」を見据える先見性を持っていたことを示しています。彼のビジョンは、いわば「紙のグーグル」となることを目指していたのです。彼の企業文化においては、社員のやる気を引き出すことが重要であり、彼はその才能を自ら意識することなく開花させることに成功しました。
興味深いことに、今やテクノロジーの象徴ともいえるAmazonの創業者、ジェフ・ベゾスも江副の影響を受けています。ベゾスは、社会人としてのスタートを切った頃、江副が買収したフィテルに在籍していたのです。このような人物が江副の指導の下でどのように成長したかを考えると、江副の影響力の大きさを理解できます。
日本におけるベンチャー企業の少なさ、すなわちベンチャー不毛の地とも言われる現状の中で、江副浩正が求めた「起業家の資質」は今なお問いかけられています。リクルートの成長は、江副が直面した困難に屈することなく、1兆8000億円もの負債を自力で返済するという奇跡を成し遂げたことに起因しています。リクルートは、その後国内で時価総額10位にまで成長しました。
本書は、こうした歴史的背景を踏まえ、苦境に立たされた日本人に対して勇気を与えるメッセージを多く含んでいます。江副浩正の生涯を通じて、彼が含意する「起業の天才」の姿を知ることができるでしょう。
さらに、大西康之氏によるこの評伝は、著者自身の経歴を活かしており、日経新聞編集委員としての経験を活かした視点から描かれています。彼は江副の人生を振り返りながら、日本経済の再生の道を示す内容に仕上げています。江副浩正という人物を通じて、我々は日本経済の未来を見直すきっかけを得られるのかもしれません。今後の発売が待たれます。
書籍の詳細は以下の通りです:
- - 【タイトル】起業の天才!江副浩正8兆円企業をつくった男
- - 【著者名】大西康之
- - 【発売日】10月29日
- - 【造本】新潮文庫
- - 【定価】1155円(税込)
- - 【ISBN】978-4-10-101262-9
- - 【URL】新潮社