カーボンナノチューブを活用した新しい電極材料の技術革新

新しい電極材料の開発

矢崎総業株式会社の米国子会社、YTC America Inc.が開発した新型のバインダフリー電極材料は、カーボンナノチューブ（CNT）を基にした電極で、従来の技術と比べて内部抵抗が大きく低下し、蓄電デバイスの寿命がなんと2倍にも向上しました。また、急速充電や放電が可能になるなど、電気性能の面でも優れた結果を示しています。

研究開発の背景

現在、私たちの社会はカーボンニュートラル社会の実現に向け、電化や電動化が進展しています。その背景には、AI技術の発展や再生可能エネルギーの利用促進があります。それに伴い、リチウムイオン電池やスーパーキャパシタの需要が高まっており、これらの大容量・高出力蓄電デバイスが注目されています。しかし、従来の技術には、樹脂製バインダが含まれており、それが内部抵抗を増加させ、充放電速度の低下や寿命の短縮といった問題を引き起こしていました。そこで、CNTを用いた新しい電極材料の開発が必要とされました。

新材料の特長

今回開発したバインダフリー電極材料は、樹脂製のバインダを全く使用せず、CNTの特性を活かした構造を持っています。そのため、電極材料の製造プロセスが簡略化され、コストの削減にも寄与します。具体的には、界面活性剤や分散剤を使用せず、有機溶媒や水性溶媒を通じてCNTを分散させることが可能です。

また、配合されたCNTが電極活物質の周りで効果的に絡まり、電極の形状を保持します。そのため、従来必要だった樹脂製バインダや導電性材料が不要になります。これにより、環境への影響を最小限に抑えつつ、高品質の電極材料を提供できます。

性能向上の実績

開発されたバインダフリー電極を使用したリチウムイオン電池のテストでは、内部抵抗が従来の電極の半分にまで低下し、電池の寿命も大幅に延びることが確認されました。また、急速充電・放電においても、6分間の充電時間で容量保持率が2倍以上に向上しています。同様の技術を用いたスーパーキャパシタでは、内部抵抗が減少し、充放電速度も向上する結果が得られています。