脳の神経伝達を支える新たな糖鎖の役割を解明
岐阜大学糖鎖生命コア研究所を中心とした研究チームが、脳に特異的に存在する糖鎖合成酵素MGAT5Bが、神経伝達の速度とタイミングに関与していることを新たに発見しました。この成果は、脳機能の新たな理解を進め、様々な神経系疾患の解明にも寄与すると期待されています。
研究背景
MGAT5B(GnT-IXとも呼ばれる)は、O-マンノース(Man)型糖鎖を形成する酵素で、脳細胞で特に重要な役割を果たしています。これまで、MGAT5Bが関与する疾患として脱髄疾患や脳腫瘍が知られていましたが、正常な脳におけるその機能はあまり理解されていませんでした。今回の研究により、MGAT5Bが神経信号の迅速な伝達において不可欠であることが明らかになったのです。
研究の進展
研究グループは、MGAT5Bを欠損したマウスを用いて実験を行いました。その結果、これらのマウスでは神経伝達を行う構造「ランビエ絞輪」が異常に広がっており、その影響で信号伝達が遅くなるだけでなく、タイミングにバラつきが生じていることが明らかとなりました。具体的には、運動能力が低下したことも観察されました。
特に、O-Man型糖鎖がNF186というタンパク質に付着していることが発見され、NF186はランビエ絞輪の形成に関与していることが分かりました。研究チームは、MGAT5Bの役割を通じて神経伝達の仕組みを更に解明するための具体的な手法を模索したのです。
研究の成果
MGAT5Bを欠損したマウスで、運動野の神経伝達速度を測定したところ、信号は遅く、運動機能が低下していることが確認されました。この研究は、MGAT5BがO-Man型糖鎖を形成してランビエ絞輪の正常な機能を維持していることを示唆しています。
さらに、MGAT5Bが作成するO-Man型糖鎖がNF186とCNTN1という2つのタンパク質の結合を抑制することにより、ランビエ絞輪の幅を適切に保つ役割を果たしていると考えられています。
今後の展望
この研究の成果は、脳の糖鎖における新しい役割を明らかにすることに繋がります。MGAT5Bが関与する疾患の病態解明や、新薬の開発へとつながる可能性があります。特に脱髄疾患や脳腫瘍に対する新たなアプローチが期待されており、今後の研究が非常に楽しみです。
今回の研究は、国際的な研究誌「Communications Biology」に発表され、科学技術振興機構(JST)の支援を受けて実施されました。この成果が、糖鎖研究の新たな展開をもたらすことに寄与することを期待しています。