WMS導入における運送・輸送業界の失敗実態
運送や輸送業の現場で、実効的な在庫・倉庫管理システム(WMS)の導入が難航することがしばしば見受けられます。これは、ニーズに合致したシステムを選定することの重要性を示すものですが、具体的にはどのような失敗が起こっているのでしょうか。株式会社ダイアログが実施した調査から、その実態を探ってみましょう。
調査概要
2024年3月14日から18日までの間、運送・輸送業界でWMSの選定において失敗を経験した111名の会社員を対象にしたインターネット調査が行われました。その結果、さまざまな観点からWMS導入の課題が浮き彫りになりました。
WMS導入の失敗事例
主な失敗内容
調査によれば、最も多かった失敗の内容は「取引先や現場との連携が取れていなかった」(39.6%)というものでした。このことから、システムを導入する際には単にツールを導入するだけでなく、現場との調整や情報共有が欠かせないことが分かります。次に多かったのが「現場のニーズと機能が合っていなかった」(37.8%)という回答で、特に実際の業務フローに則した機能設計が求められています。
さらに、「WMSの機能が自社サービスに合っていなかった」(32.4%)や「基幹システムとの相性が合わなかった」(31.5%)という回答も多く、既存システムとの統合や適合性が重要な要素であることが示唆されています。このように、システム導入前に十分なリサーチや調整が行われていないことが多くの失敗を招いているようです。
失敗の要因
さらに分析された失敗の要因では、「現場側の意見を取り入れていなかった」(42.3%)、既存システムとの相性を考慮できていなかったことが同様に42.3%と、ほぼ同率で上位に挙がっています。加えて「情報収集が不足していた」(41.4%)との回答もあり、計画段階での準備不足が深刻な影響を与えていることがうかがえます。これらの結果は、WMSの選定において事務的な視点だけでなく、業務の現場との調和を求める姿勢が欠かせないことを示しています。
導入後の影響
WMSの選定失敗によって生じた影響は無視できません。具体的には「出荷ミスや遅延の発生」が49.5%で最多であり、業務フローが複雑化した(37.8%)や業務効率が低下した(36.0%)との回答も多く見られました。この事実は、システムの導入が業務運営に良い影響を及ぼすと考えられる一方で、しっかりとした導入計画がない場合は反対の結果を招く可能性が高いことを示しています。
その後の対応
面白いことに、約54.1%の人が「そのまま使い続けた」と回答しており、その理由には「リプレイスには高い費用がかかるため」が最も多く、経済的制約が導入後の変化を難しくさせている現実が浮かび上がってきます。WMSを導入後も多くの企業が手をこまねいている状況で、システムの見直しがなかなか行われない様子が見て取れました。
まとめ
本調査を通じて、WMSの導入におけるさまざまな失敗事例やその背景が明らかになりました。企業がWMSを選定する際には、現場とのコミュニケーションや、既存システムとの相性を十分考慮することが求められます。また、失敗後に同じシステムを使い続ける傾向が高いことから、まずは小さな評価を進め、その後に全面的なシステムの見直しへと進むアプローチが効果的かもしれません。今後、運送・輸送業界がWMSをより有効に活用していくためには、ニーズに即した柔軟なカスタマイズやサービス提供が必要でしょう。