薬価引き下げの波
2012-03-14 16:30:33
インド特許庁が強制実施権を発動、薬価大幅下落の期待
インドの特許庁、初の強制実施権を発動
2012年3月12日、インド特許庁は同国で初の強制実施権を発動しました。これにより、ナトコというジェネリック薬メーカーがトシル酸ソラフェニブと呼ばれるがん治療薬の製造を行えるようになりました。この決定は、薬価の高騰が問題視されていた中で下されたもので、特に腎臓や肝臓のがん治療において重要な意味を持っています。
ジェネリック薬の価格革命
ナトコは、ドイツの製薬企業バイエルに対して、トシル酸ソラフェニブの特許権使用料を定率6%で支払うことを条件に製造を開始します。インド国内において、この薬のジェネリック版が市場に出回ることにより、現在の高価格が97%も引き下げられる見込みです。具体的には、現在月5500米ドル(約45万円)のところ、175米ドル(約1万4500円)近くまで下がる可能性があります。
この制度の導入は、特に低所得層にとって救いとなるでしょう。国境なき医師団(MSF)のディレクター、ティド・フォン・シェーン・アンゲラー医師によれば、今回の決定は他の医薬品にも波及効果をもたらす可能性があり、特許保護下の医薬品に対する新しい見直しの流れになることでしょう。
製薬企業の責任
特許庁が強制実施権を発動した背景には、バイエルの薬価設定や供給の不足が指摘されています。薬を必要とする患者が手に入れられない状況は、国民の健康を脅かすため、一度この制度が功を奏すれば、開発途上国への影響は計り知れません。特許権を保有する企業も、特許使用料を得ることで一時的な収入は確保されます。
MSFの必須医薬品キャンペーン政策責任者、ミシェル・チャイルズは、厳しい薬価の状況を変えるための警告を発するとしています。不当高価である薬に対する制裁が実施されることで、他の製薬企業も同様の対応を迫られるかもしれません。
新たな医療への道
特許制度の見直しは、新薬の開発促進やアクセス拡大に寄与するものとして期待されています。現在、多くの薬が特許によって価格が高止まりしている実情がありますが、ジェネリックメーカーが特許使用料を支払うことで安価な医薬品を提供することが可能になるのです。
シェーン・アンゲラー医師は、HIV/yエイズ治療薬の分野でも特許権保有者と交渉が進み、より多くのジェネリック薬メーカーが強制実施権を利用することを期待しています。
インドは、世界において医薬品供給の重要な位置を占めており、その動向は他国にとっても影響を与えるでしょう。多くの患者が手の届く価格で治療を受けられるよう、今後の動きが注目されます。
会社情報
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国境なき医師団(MSF)日本
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