低温解重合技術が切り拓く新たなPETケミカルリサイクルの道
プラスチックリサイクルは、サーキュラーエコノミーの実現に向けて非常に重要なテーマであり、特にPET(ポリエチレンテレフタレート)のケミカルリサイクルはその中でも注目されています。国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)と株式会社AIST Solutions(AISol)は、革新的な低温解重合技術を駆使した新たなリサイクル事業を開始しました。
プロジェクト概要
このプロジェクトは、一般社団法人低炭素投資促進機構の「令和7年度 産官学連携による自律型資源循環システム強靱化促進事業」として採択されています。主な目的は、年間10トン規模のセミパイロットプラントを建設し、低温(50~70℃)環境下でのPET樹脂の解重合を行うことです。
課題と解決策
従来の高温でのPETリサイクルプロセスは、コストが高く、他成分が混らないようにする難しさがありました。産総研は、この問題を解決すべく、低温・常圧という条件下でのPET樹脂のみを分解する新技術を開発。これにより、複雑な素材でも再資源化が可能となります。
得られるモノマーは原材料として再利用できるため、これまでリサイクルが困難だった複合繊維や染色繊維、フィルム製品の資源化が実現します。つまり、CO₂排出量の削減にも寄与することが期待されています。
取り組みの進展
これまでに、産総研はラボスケールおよびベンチスケールで技術の実効性を確認しました。今後、このセミパイロットプラントでの解重合処理を通じて、PETモノマーであるジメチルテレフタレート(DMT)やエチレングリコール(EG)の生産を目指します。
このプロジェクトの知見を基に、さらなるスケールアップと商用プラントの整備が行われる予定です。2040年代前半までには、商用プラントが稼働することを見越しています。また、パートナー企業と共にサーキュラーエコノミーの実現に努め、日本の資源循環エコシステムを強化していく考えです。
技術の優位性を生かして
今回のプロジェクトは、触媒技術や化学工学の専門知識が結集されており、産総研の技術的優位性を生かした未利用資源の有効活用が期待されています。持続可能な循環型社会の実現に向けた大きな一歩となるでしょう。
イベント情報
このプロジェクトに関連する活動として、産総研とAISolは様々なイベントも開催予定です。
日時: 12月10日(水)〜12日(金)
場所: 東京ビッグサイト
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開催予定: 2026年2月中旬~3月上旬
場所: 東京都内
これらのイベントでは、最新の技術とその実現に向けた取り組みが詳しく紹介される予定です。
まとめ
PETケミカルリサイクルは、環境保護の面からも、社会全体にとっても極めて重要な分野です。産総研とAISolの新技術が、プラスチックリサイクルの促進に寄与し、持続可能な未来を築く一助となることを期待しています。