新しい圧電薄膜の発表
2025-01-21 14:06:25

高周波通信を支える新しい圧電薄膜の開発で通信性能向上を実現

最近、国立研究開発法人産業技術総合研究所の研究チームが、圧電薄膜の性能向上に成功し、グローバルな通信業界に大きな影響を与えることが期待されています。この新たな薄膜は、特に高周波通信における弾性波フィルターの性能を飛躍的に高める可能性を秘めています。

まず、弾性波フィルターについてですが、これらは無線通信機器に欠かせないもので、特定の周波数帯域の信号を選別して通過させる役割を果たします。特にスマートフォンでは、多くの周波数フィルターが利用されています。そして、これらは圧電材料で構成されており、材料の圧電性能がフィルターの性能に直結します。

現在、窒化アルミニウム(AlN)にスカンジウム(Sc)を添加したScAlN薄膜が主に使用されています。このScAlNは優れた圧電性能を持ち、主流の素材となっているのです。しかし、これまではスカンジウムを濃くすると、結晶構造が不安定になるため、圧電性能向上に限界がありました。具体的には、スカンジウムの添加量は43mol%が上限で、これ以上の濃度では安定した圧電性能が得られなかったのです。

そこで、今回の研究は、下地層にルテチウム(Lu)を導入する手法を採用しました。ルテチウムはAlNと同じ結晶構造を持つため、材料の結晶性や配向性を保ちながら、スカンジウムの添加量を50.8mol%まで拡大することに成功しました。この結果、今までで最高となる35.5pC/Nの圧電定数を達成しました。この数値は、グローバルに見ても非常に高いものであり、この新しい技術が通信デバイスの性能向上に寄与することは間違いないとされています。

この技術の応用が期待される分野は、単にスマートフォンに限りません。自動運転技術に不可欠な距離センサーの性能を高める材料としても利用されることが見込まれており、将来的にはさまざまなデバイスに応用される可能性があります。

今後の方針に関しては、この新しい薄膜の膜厚を最適化し、実用化に向けた技術開発を進める計画です。また、ScAlN薄膜による高濃度スカンジウムの技術進展と、他の材料系への展開も視野に入れています。この研究は、まさにここ数年の通信方式の進化に対応し、さらなる高速通信時代を切り開くものとなるでしょう。

今回の成果は、圧電薄膜の新たな可能性を示すもので、多くの業界において、その結果が享受されることが期待されています。具体的な研究成果は、2025年1月15日に「Materials Today」に掲載されるとのことですので、今後の動向に注目です。


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