寂聴物語の魅力
2023-04-26 10:39:32
生誕100年を迎えた瀬戸内寂聴の歩みとその魅力をたどる一冊
100年の時を越える瀬戸内寂聴の物語
2023年4月29日に刊行された『生誕100年瀬戸内寂聴物語』は、徳島新聞の評伝連載を元に一冊にまとめられています。この作品は、作家としての道を歩みながら、さまざまな選択をしてきた寂聴さんの複雑な人生を浮き彫りにしています。彼女の初期の決断、恋愛、出家、そして社会活動など、様々なテーマを通じてその生涯に迫っています。
若き日の選択と作家としての成長
若い頃、寂聴さんは幼い娘と夫を捨てて家を出ます。その背景には、一体どんな思いがあったのでしょうか。恋や不倫を通じて文壇での地位を確立した51歳の時、なぜ突然出家を選んだのか。この選択には、彼女の内面的な葛藤と覚悟が表れています。
出家後、寂庵を拠点として僧侶としての道を歩んだ彼女は、法話や社会活動を通じて多くの人々に寄り添い続けました。湾岸戦争の際には反戦を訴え、東日本大震災では被災地に駆けつけて励ましの言葉を投げかけました。彼女の言葉には、常に人々への深い愛情や優しさが表現されています。
文学作品とその影響
寂聴さんの作品には代表作『夏の終り』『場所』、さらに『源氏物語』の現代語訳などがあります。本書はこれらの業績も分かりやすく紹介しており、彼女の文学が現代にも響く意義を示しています。晩年まで小説を書くことをやめられなかった寂聴さんは、作品を通じて自らの煩悩と向き合っていたと語る姿が印象的です。
多彩な活動と古里への思い
彼女は晩年にもエネルギーあふれる活動を続け、徳島への恩返しとして「寂聴塾」を開くなどし、地域文化の発展にも寄与しました。また、人形浄瑠璃やオペラなど多岐にわたる創作を行い、豊かな表現力を示しました。
本書では、彼女の生涯をテーマごとに分けて読み進めることができるため、興味のある部分から手に取ることが可能です。恋愛や出家、震災に関する章では、彼女が直面した現実や感情が描かれ、読者の共感を呼ぶことでしょう。
登場人物と関わり
寂聴さんは生まれ故郷の徳島、出家後の京都、そして岩手県の中尊寺での生活など、三つの古里に対する深い愛着を持っていました。各地との関わりやそこから生まれた逸話も取り上げられ、より深く彼女の魅力を伝える内容となっています。
上質な資料としての価値
本書の特徴として、太田治子や柴門ふみといった著名人の寄稿も挙げられます。彼女の晩年に密着した取材を元に執筆されたため、寂聴さんの淡々とした日常や深い思索が色鮮やかに描かれています。貴重な写真が多数収められており、彼女の作品や名言を通じてその魅力を感じることができます。
本書『生誕100年瀬戸内寂聴物語』は、寂聴さんの多彩な生涯を理解するための貴重な手引きであり、文学や人権に関心のある方々にとって、価値ある一冊となることでしょう。彼女の歩みを知ることで、私たちもまた、新たな気づきを得ることができるのではないでしょうか。
詳細事項
本書はB6判224ページ、価格は税込1430円です。新しい発見を与えてくれるこの作品を手に取ってみてはいかがでしょうか。申し込みや問い合わせは、徳島新聞社のお客さまセンターへどうぞ。
会社情報
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一般社団法人 徳島新聞社
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- 徳島県徳島市中徳島町2丁目5-2
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088-655-7373