岩手県の未来を支える子どもたちの挑戦
今年の8月、岩手県久慈市で特別なイベントが開催されました。この取り組みは、一般社団法人海と日本プロジェクトin岩手が主催する「いわてマリンツアー2025」で、小学5・6年生を対象とした1泊2日の海の体験学習です。岩手の海は、豊かな自然環境と多くの海産物に恵まれていますが、現在はウニの減少という深刻な問題に直面しています。このイベントは、次世代に美しい海を残すために、子どもたちが海の大切さやその課題について考える機会を提供する目的で行われました。
海の豊かさとウニの危機
イベント初日、参加した子どもたちは、岩手の海についての講義からスタートしました。岩手大学の谷田 准教授が、リアス式海岸の恵まれた環境について説明し、特に「キタムラサキウニ」が全国有数の漁獲量を誇ることを紹介しました。しかし、最近の温暖化の進行に伴う海水温の上昇や、藻場の減少によってウニの漁獲量が急激に減ってきています。これらは、日常的に私たちが楽しむウニの未来に直結する重大な問題です。
初めて知る現実に、参加した子どもたちは真剣な表情で話を聞きました。美味しいウニを食べられなくなるかもしれないという危機感が、彼らに海の問題を自分ごととして考えるきっかけを与えました。
その後、久慈地下水族科学館もぐらんぴあを訪れ、実際の水槽を通して魚の生態や岩手の海の環境について学び、海の豊かさへの理解を深めていきました。
具体的な取り組みを実践
午後は、ウニを育てるための具体的な取り組みを知るために、麦生漁港へ移動しました。南侍浜漁業研究会の舛森 清さんから、ウニの「畜養」について学びました。この方法は、痩せたウニを捕獲し、人工的にエサを与えて育てることで、健康的なウニを育てる取り組みです。
実際にウニを観察し、自分たちでウニの殻を剥く体験を通じて、漁業の作業に触れ、新鮮なウニの美味しさを実感しました。子どもたちは、生きたウニの動きに歓声を上げながら、ウニが成長するための適切な環境について学びました。
海を守るために私たちにできること
2日目は、三陸ボランティアダイバーズの代表、佐藤 寛志さんが岩手の海が直面している問題とその解決に向けた取り組みを講義しました。この団体は、海底清掃や磯焼けを防ぐための藻場再生など、多彩な保全活動を行っています。子どもたちは、海の温暖化や生態系の変化について学び、人間が海の未来を守るために何かできるかを考える貴重な機会となりました。
普代浜でのシュノーケリング体験では、実際に海の生態系を観察し、海の重要性を身をもって学ぶことができました。
学びを社会に発信する
イベントの最後には、振り返りの時間を設け、グループごとに「岩手の海とウニを守るために必要なこと」について議論しました。ここでは、電気の無駄遣いを減らす・清掃活動を行うなど、日常で実践できるアイデアを出し合いました。また、ウニの瓶詰商品に使用するオリジナルデザインの制作にも挑戦し、海の重要性を伝えるための創意工夫を凝らしました。
このイベントを通じて、子どもたちの多くはウニや海を守ることの重要性を実感し、自らの学びを周囲に発信する機会を設けることに期待を寄せていました。
参加者の声
参加した子どもや保護者からは、海について学ぶ貴重な機会となったと好評で、温暖化の影響を実感し、今後は家庭で環境問題に目を向けるようになるという意見が多く寄せられました。
「地球温暖化の影響でウニが減っていることを知り、ショックを受けた」「普段できない体験ができてよかった」といった感想が目立ち、参加者たちは海へ目を向け、行動する意欲を新たにしたようです。
この「いわてマリンツアー2025 in 久慈」を通じて、参加した子どもたちが次世代に向けて海を大切にする意識を持つきっかけを得ることができたことでしょう。そして、私たちもまた、海の未来のために何ができるかを考える必要があるのではないでしょうか。