社労士が企業の労使コミュニケーションに与える影響とは
2024年夏、全国社会保険労務士会連合会が実施した調査には、社労士がどのように企業の労使コミュニケーションに携わるのかを探る目的がありました。この調査は主に二つのセクションから構成されています:社労士向け調査と社労士が関与する企業向け調査です。
社労士向け調査の結果
調査の結果、参加した380人の社労士のうち、実に80%以上が月に一度以上クライアント企業からの相談を受けていることがわかりました。社労士は、企業と労働者の双方にバランスの取れたアドバイスを心がけているとの回答が84%を占めており、そのスタンスが労使関係の調整に寄与していることが確認されました。
さらに、約60%の社労士が一般従業員との接触の機会が「ある」と答えており、その内訳としては従業員からの相談申し入れが最も多く、70%以上の社労士がこの形での関与を示しています。また、個別面談への同席も40.6%の社労士によって実施されていることが明らかになりました。
人事制度への関与
社労士が人事制度の作成に関わる際、最も多く見られるタイミングは「作成・見直しが必要になった段階」とされ、これが65%という高い数字です。これは、社労士が初期段階から積極的に関与する姿勢を反映しています。
意見収集の方法についても調査が行われており、労働組合や従業員アンケート、個別面談により収集された意見は制度に一定程度反映される一方、過半数代表者への意見収集では、全体に比べ影響を持たない意見も多いことが浮き彫りになりました。
社労士関与先企業の調査結果
144社からの回答を基にした調査でも、企業における社労士への依頼のタイミングは「作成・見直し必要が発生した段階」が49.3%を占め、社労士との初期段階からの相談が多いことが示されました。
この調査では、63%の企業が何らかの方法で従業員に対して意見収集を実施しており、特に過半数代表者に意見を求める形式が全体の26%で最も多く見られました。しかし、社労士に依頼した企業は73%が意見収集を実施しており、依頼をしなかった企業の43%と比べて意見収集の実施率に明確な差が見られることが分かりました。
さらに、収集した意見が制度に与える影響についても調査され、「労働者全員を対象にしたアンケート」や「労働者との面談」を行った場合、その意見が制度に反映される割合が高いことが確認されました。このことは、従業員全体から意見を集める重要性を示しています。
社労士のスタンスと企業の認識
最後に、社労士に対する企業の認識についても調査が行われました。企業の85%が「社労士は会社と労働者双方のバランスを取ったアドバイスを行っている」と回答しており、これは社労士側の調査結果と一致しています。このような相互理解が労使関係をより良いものにする鍵となるでしょう。
まとめ
今回の調査は、社労士と企業との関係構築の重要性と労使コミュニケーションの改善には社労士の関与が不可欠であることを示しました。今後も、このデータを基に労働基準関係法制の改正議論に活かされていくことが期待されます。