豊田章男のリーダーシップと真実
トヨタの現会長、豊田章男社長の苦悩と成長を描いた新刊『上司 豊田章男――トヨタらしさを取り戻す闘い5012日の全記録』が、2025年9月4日に発売されます。この本は、著者である藤井英樹さんが豊田社長の身近な存在として、彼の真実を描くことに挑んだ作品です。本書は、豊田社長が社長に就任した直後から数年にわたる、数々の危機を乗り越える姿を追いかけており、トヨタの未来を多少なりとも左右した重要なタイミングを詳細に記録しています。
書籍の背景と目的
豊田章男社長は、2009年6月に社長に就任しました。しかし、彼が直面したのは、リーマンショックによる赤字転落、大規模なリコール問題、さらには東日本大震災という、会社の危機を一手に引き受ける厳しい状況でした。この本は、著者が広報担当業務秘書として豊田社長を支えながら、彼の思いや葛藤、迷いを深く掘り下げて描いています。藤井さんによると、豊田社長の信念や経営哲学は、彼自身の体験を通じて生まれたものでもあります。
信頼関係の構築
藤井さんは、当初、豊田社長の価値観とは異なり、彼と意見が食い違っていました。その後、リコール問題の際に豊田社長から「お前が来い」と言われ、彼との関係がスタートします。英語が苦手な著者は、「広報部員に行ってもらいたい」とお願いしたところ、豊田社長は「トヨタには英語を話せる人がいる。しかし、僕の気持ちがわかるのはお前だけだ」と応じ、言葉に腑に落ちる思いを抱えつつ乗り込むこととなりました。
経営者としての姿勢
豊田社長は「今日よりも明日を良くする」ことが大切だと語っており、その背景には彼のビジョンと熱意が溢れています。本書には、社長時代のスピーチや言葉が掲載されており、経営トップとしての姿勢や考え方が垣間見えます。藤井さんは、豊田社長の言葉だけでなく、彼の行動からも多くの学びを得たと語ります。特に印象に残っているエピソードの一つは、「至ろう」という考え方自体がおこがましいということを教わった瞬間です。
本書の魅力
『上司 豊田章男』は、トヨタに関わる全ての人にとって貴重な一冊であり、経営者としての真摯な姿勢を感じ取ることができる作品となっています。目次には、「なぜトヨタは赤字に陥ったのか」「『肩書なんて関係ない。最後は見ている者が強い』といった教訓が並んでおり、トヨタがどういう方向に進むべきかを考える上で参考になります。
著者の略歴
藤井英樹さんは、1968年に大阪府に生まれ、トヨタ自動車株式会社に1991年に入社しました。広報部や人材開発部での経験を経て、豊田社長の広報担当業務秘書として活躍。大きなメディアプロジェクトである「トヨタイムズ」の立ち上げにも尽力し、現在に至るまでの歩みを持っています。彼の視線を通して描かれる豊田社長の素顔は、トヨタの未来を見据える上での重要な手助けとなるでしょう。