日本の現代思想を考察する新たな一冊
現代思想についての関心が高まる中、NHK出版より待望の新刊『新版集中講義! 日本の現代思想ポストモダンと「その後」を問いなおす』が発売される。この書籍は、戦後の思想家たちを分析しながら、ポストモダン思想の功罪を掘り下げる内容となっている。著者は金沢大学の仲正昌樹教授で、多数の著書を持つ哲学者だ。今回は彼が描く思想の地図を見ていこう。
現代思想の系譜
本書は、「思想」は今、どのように日本を分析しうるのかという核心的な問いから始まる。40年ほど前、特に1980年代においては、さまざまな思想が流行し、多くの若者たちへの影響を与えた。しかし、その流行がどのように生まれ、そしてどのようにして終焉を迎えたのかを掘り下げる必要があると著者は強調する。
例えば、丸山眞男や吉本隆明といった戦後の思想家たちとの比較を通して、彼らがどのようにポストモダン思想を形成したのかを考える。これにより、単なる思想の流行に留まらず、社会を分析するための道具として思想がどのように機能したのかが検証される。
書籍の構成
本書は全体的に「現代思想」の起源からその後の展開、そして二一世紀における「日本の現代思想」という問いかけまで、明確な構成で進行する。以下は各講義の概要だ。
第一部: 空回りしたマルクス主義
- - 現実離れした戦後マルクス主義
- - 大衆社会におけるサヨク思想
第二部: 生産から消費へ
- - ポストモダンの社会的条件
- - 近代知の限界とその後の思想展開
第三部: 八〇年代の現象
- - 日本の「現代思想」の誕生
- - 「ニュー・アカデミズム」の広がり
第四部: 思想の終焉
- - なぜ「現代思想」は「終焉」したのか
- - 簡略化される「現代思想」の理解
第五部: 物語を見失った日本
社会における思想の可能性
結局のところ、著者が問いかけているのは、現代社会において思想が果たす役割だ。個人主義が進む中で、社会分析のツールとして「思想」を再評価しなければならない時代が来ている。その兆しが見えるのか、もしくは思考の力が失われてしまったのか、読者は自らの意見を形成する必要がある。本書はそんな議論を促す一冊である。
まとめ
仲正昌樹教授の新著『新版集中講義! 日本の現代思想ポストモダンと「その後」を問いなおす』は、日本の現代思想を深く問い直すための貴重な資料となり得る。現代に生きる私たちが思想とどう向き合っていくべきか、考えるきっかけを与えてくれる一冊である。是非、手に取ってその内容に触れてみて欲しい。