旭化成が推進する食塩電解用セルの金属リサイクル実証プロジェクト
2023年、旭化成株式会社とオランダのNobian、東京のフルヤ金属、イギリスのMastermeltの4社が協力し、食塩電解用セルおよびその内部の電極に関連する金属リサイクルの実証プロジェクトを開始しました。この取り組みは、クロールアルカリ業界における金属リサイクルエコシステムの構築に向けた重要なステップとなります。
背景と動機
近年、電池や電子部品の需要の増加、さらには水素製造技術の進展に伴い、イリジウムやルテニウムといった貴金属の需要が急増しています。しかし、その産出量は限られており、供給の不安定性や価格上昇のリスクが懸念されています。特に、クロールアルカリ業界では、貴金属の安定した確保と効率的な循環利用が中長期的な課題として浮上しています。
この状況に対処するため、旭化成は2023年からNobianと共同で、セルのレンタルサービスの実証を開始しました。このサービスの実施を通じ、貴金属リサイクルの重要性を再確認し、エコシステムへの貢献を目的としています。
リサイクルプロセス
プロジェクトの流れは、まず旭化成がNobianから耐用年数を迎えた電極を回収することから始まります。続いて、Mastermeltとフルヤ金属がその電極から触媒を剥離し、さらには高純度の貴金属を取り出す工程に着手します。
その後、旭化成がその貴金属を利用して、触媒を塗布したリサイクル触媒電極を製造。この新たな電極がNobianの食塩電解に使用されることで、苛性ソーダと塩素の製造における資源循環が実現されるのです。これにより、4社は使用済みのセルと電極から貴金属を回収し、再利用する新たなリサイクルプロセスを確立していくことになります。
今後の展望
旭化成は、エンドユーザーとサプライヤー間の取引にとどまらず、クロールアルカリ業界全体へこの取り組みを拡大していく考えです。セルと電極の安定供給によって、エコシステムの構築を目指しています。最終的には、トレーサビリティを付与し、リサイクルした貴金属を含む合成セル・電極の導入を進めることで、さらなる循環性と可視化を図りたいと考えています。
また、これらの取り組みを通じて、グリーン水素製造へも応用・展開する意向を示しており、持続可能な社会の実現に向けての一歩を踏み出しています。
結論
この食塩電解用セルの金属リサイクルプロジェクトは、貴金属のリサイクルにおける重要性を再認識させるとともに、持続可能な産業の育成に寄与する将来的な展望を持っています。旭化成とそのパートナーが協力することで、革新の波がクロールアルカリ業界にもたらされ、さらなる成長が期待されます。