大和証券のAIエージェント導入による業務効率化
大和証券株式会社(以下、大和証券)は、カスタマーサポート向けのAIエージェント「KARAKURI assist」を導入し、顧客対応のDX(デジタルトランスフォーメーション)を促進しています。この導入は、業務効率化と標準化を目的にしており、特にコンタクトセンターにおける属人化の解消を目指しています。
導入の背景
大和証券のコンタクトセンターは、顧客への応対を通じて課題解決を支援する重要な役割があります。しかし、証券業務特有の手続きの複雑化や、NISA関連の問い合わせの増加により、業務はますます複雑になっているのが現状です。特に、メール対応においては以下のような課題が浮き彫りになっていました。
- - 定型文活用が個人に依存し、属人化が進む。
- - 新人オペレーターは定型文の活用ノウハウが不足し、一人立ちまでに時間を要する。
- - ナレッジが分散しており、対応品質にばらつきが生じる。
これらの課題に対処するため、KARAKURI assistの導入が決定され、業務改革の一環として活用されています。
KARAKURI assistの活用方法
大和証券では、2024年11月からKARAKURI assistをトライアルし、2025年2月から本格運用が開始されました。導入効果を最大限に引き出すため、以下のポイントを重視した活用に取り組んでいます。
1. 効果的なタグ設計
顧客からの問い合わせパターンを分析し、それに対応するタグを設計。これにより、必要な回答テンプレートへのアクセスが迅速に行えるようになり、検索ヒット率が向上しました。
2. ボトムアップ型ナレッジ共有
定型文の登録をオペレーター全員が可能とすることで、現場の実践知を活用したナレッジベースを構築。2025年1月には、全メール件数のうち約3割が定型文を活用し、平均で約6分50秒の時間短縮を実現しました。この結果、1カ月間で52時間もの工数削減が達成されました。
組織浸透を促す定型文コンペ
KARAKURI assistの浸透と積極的な活用を促進するため、大和証券では「定型文コンペ」を実施しています。この取り組みの主な特徴は以下の通りです。
- - チーム内で定型文の登録件数を競い合うコンテストを実施。
- - 最も多く使用された定型文を登録したメンバーを表彰。
- - オペレーターが「用意されたものを使う」受動的な姿勢から「自ら作り、活用する」主体的な意識への転換を促進。
この競争原理を活用した取り組みにより、多くの企業が抱える「導入後に使われないシステム」の課題を乗り越えることができました。KARAKURI assistの特性を生かしたこの施策は、高品質なナレッジベースの構築に寄与し、自発的な参加意欲を引き出しています。
ユーザーの声
大和証券東京コンタクトセンター第一部の課長代理、加藤純平氏は「KARAKURI assistの導入と定型文コンペの実施により、ナレッジの共有と活用が飛躍的に進みました。オペレーターが主体的な意識を持つことが重要でした。コンペを通じて楽しみながら取り組むことが、ツールの定着に貢献しています」とコメントしています。今後は、チャットなどのノンボイスチャネルへの対応拡張も見据えており、顧客への価値創造をさらに進めていく考えです。
まとめ
大和証券が導入したKARAKURI assistは、顧客対応の効率化とスタッフの負担軽減だけでなく、組織全体のナレッジ共有を促進する画期的な施策です。その成功要因は、業務に即した柔軟な活用と、楽しみを取り入れた競争的なアプローチにあります。このような取り組みが、今後のカスタマーサポートのあり方にどう影響を与えるのか、引き続き注目です。