フランス・ナントでついに開幕した北斎名作展
フランスのナント市で、今年の夏の主要イベントである「ボヤージュ・ア・ナント」の一環として、「北斎(1760-1849)小布施北斎館の名作」展が開催されています。期待の高まるこの展覧会は、6月28日から9月7日までの期間中、ブルターニュ大公城とナント歴史博物館で行われ、北斎の魅力を余すところなく展示しています。
展覧会の概要
ナント市はフランス北西部に位置し、毎年約100万人が訪れる人気のある文化イベントがあります。今年の「ボヤージュ・ア・ナント」では、長野県小布施町にある北斎館からの全面協力を受け、北斎の作品が160点以上展示されています。特に注目されるのは、小布施から移動できなかった重要な天井絵が高精細な複製画として展示されている点です。
この展覧会では、上町祭屋台天井絵「女浪」と岩松院本堂天井絵「鳳凰図」の二つの作品が特に目を引きます。これらの作品は、株式会社NTT ArtTechnologyとアルステクネの協力によって、最新の技術を駆使した高精細複製画とデジタルデータとして再現され、鑑賞者に新たな体験を提供しています。
高精細複製画「女浪」の魅力
「女浪」は、2023年にデジタル化された天井絵ですが、その制作にはアルステクネの特許技術「三次元質感画像処理技術(Dynamic Texture Image Processing:DTIP)」が使用され、原作の色彩や質感が忠実に再現されています。この複製画は木枠による立体感が特徴で、金箔や油煙墨の輝き、さらには細かい傷や窪みまで見事に再現されています。
また、前回の展示とは異なり、新たに技術開発が行われ、縁絵の金箔部分も再現に成功したことが大きな違いです。これにより、原作品の持つエッセンスがしっかりと伝わってきます。
デジタル化された「鳳凰図」の展示
もう一つの注目作品「鳳凰図」は、テクノロジーを駆使したデジタルデータによって展示されています。以前は移動が難しかったこの天井絵も、ナントの場で約40%のサイズの複製が可能となりました。デジタルで再現されたため、鑑賞者は自宅では味わえない新たな視点で作品を見ることができます。光の入り方によって変わる「鳳凰図」の見え方も特別な体験です。
終わりに
「北斎(1760-1849)小布施北斎館の名作」展は、北斎の芸術を海を越えて多くの人々に伝える素晴らしい機会です。この展覧会を通じて、北斎の作品を新たな視点で楽しむことができます。多くの文化人やアート愛好家が集うナント市。この展覧会が、北斎の魅力を改めて世界に広めることを期待しています。