第34回Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞作が発表!
2024年度の受賞作が決定しました。Bunkamuraドゥマゴ文学賞は、1990年に始まり、毎年交代する選考委員が選ぶ新進気鋭の文学賞です。今年度の選考を担当したのは桐野夏生氏。授賞式では、彼女が選んだ受賞作は、高野秀行著の『イラク水滸伝』です。
受賞作の魅力
『イラク水滸伝』は、イラクの湿地帯〈アフワール〉を舞台にしています。この地はメソポタミア文明の発祥地に近く、ユネスコの世界遺産にも登録されています。著者の高野秀行氏は、現地での取材に6年をかけ、3回の渡航で多くの人々と出会い、彼らの暮らしや文化を深く掘り下げています。書籍の中では、湿地帯でルーカスたちがどのように水牛と共に生活しているのか、また、その土地の豊かな手工芸や宗教、食文化、さらには中東情勢の裏側に迫る民族誌的な記録が描かれています。
読みごたえのあるこの作品は、ただの旅行記や観光ガイドにとどまらず、現代の「カオス」と呼ばれる状況の中で人間がどのように生きているのかをリアルに映し出しています。まさに、ノンフィクションとしての真価を発揮した一冊です。
高野氏は「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをし、誰も書かない本を書く」というポリシーを持ち、これまでにも多くの優れた作品を世に送り出しています。過去作としては『幻獣ムベンベを追え』や『謎の独立国家ソマリランド』などがありますが、『イラク水滸伝』はその集大成とも言える内容となっています。
桐野夏生氏の選考意図
選考を務めた桐野夏生氏は、多くの文学賞を受賞した実績を持つ著名な作家です。彼女の選評は、Bunkamuraの公式サイトでも掲載されています。桐野氏はこの作品が持つ独自の視点と深い洞察力を高く評価し、受賞作として選ばれるにふさわしいとした理由を語っています。
受賞者の贈賞
受賞者の高野氏には、正式な賞状とともに、スイス・ゼニス社製の時計が贈られ、副賞として100万円が贈られます。これらは高野氏の豊かな文学的功績への敬意を表するものとなります。
Bunkamuraドゥマゴ文学賞について
この文学賞は、パリの「ドゥマゴ賞」の精神を受け継ぎ、先進性や独創性を求め、新しい文学の可能性を探ることを目的として創設されました。今後も、文学の発展に寄与する素晴らしい作品を見つけ出す場であり続けることでしょう。次回の選考には最相葉月氏が選考委員として加わります。
これからも世界中の声を代弁するような作品が登場してくれることを期待しています。