株式会社スペースが実現する新たな物流の形
愛知県蒲郡市にある株式会社スペースが、メーカーと農家をつなぐ独自の中継輸送スキームを開発。これにより、仕入れコストの削減と供給の安定化を実現しています。この取り組みは、従来の物流方法に挑戦し、効率的な供給網を構築することで、農業分野や食品業界に大きな変革をもたらす可能性を秘めています。
背景:物流の非効率な現状
日本のサプライチェーンは、長年にわたり「産地→加工→小売」の一方通行のモデルが主流でした。しかし、このモデルには大きな問題点が存在しています。実際に、60%以上のトラックが空荷で回送される現状が続き、直近5年間で燃料費は約57%、最低賃金が約11%上昇しています。これは物流コストの上昇を招き、調達コストの増加が販売価格や生活コストに反映されるなど、消費者にも影響が及んでいます。
調達コストと安定供給の両立が難しい理由として、物流の固定化による供給の不安定さがあります。立地や商慣習から仕入れ先が固定化されてしまい、需要の変動や燃料価格の高騰が発生すると、調達コストと供給の安定性が同時に危うくなる構造的リスクがあるのです。また、輸送の距離や取引ネットワークの制約から、重要な産地からの調達が難しく、結果的に“近い”産地の原料が優先される傾向が強まりました。
新しい提案:中継輸送の革新
株式会社スペースは、こうした物流の課題に対して独自の解決策を提案しています。従来は独立していた原材料の配送と加工品の輸送を統合し、産地とメーカーをつなぐ循環型の輸送ルートを構築しました。「どこから運ぶか」ではなく、「どう運ぶか」を重視し、仕入れ先を再設計することで、遠方の産地からでも無駄のない低コストでの輸送を実現しています。
この新しい調達スキームでは、愛知県田原市の契約栽培の青果を産地とし、愛知県一宮市を中継ポイントとして、北陸エリアの加工・小売・外食拠点に納品する流れを確立。不必要な輸送が省かれ、コストの削減が図られています。ここでの低価格での仕入れは、新たな物流モデルの象徴とも言えるものでしょう。
導入のメリットと実績
この新手法の導入によって期待できる主な効果は、3つあります。第一に、往復便を利用することで運送コストを最大7%削減することができる点です。これは、実際の導入企業の過去のデータに基づいた実績です。
第二に、契約栽培や選別、包装を柔軟に対応できるため、安定供給が実現できることです。調達から配送まで総合的に管理し、業務用青果を必要とする企業に、効果的かつ効率的な物流を提供することができます。最後に、輸送だけでなく「届ける設計」という観点からの支援も可能にしました。単なる輸送業者ではなく、選ばれた産地からの持続可能な調達を提案することで、物流業務の煩雑さを削減できます。
特に、業務用青果を調達する企業として、加工工場や小売チェーンの青果センター、外食チェーンのセントラルキッチンなどからの引き合いが進んでおり、安定供給とコスト削減のニーズが高まっています。
代表者のコメント
代表取締役の村井美映氏は、「物流の効率化やコスト削減だけでなく、良い商品を必要な量だけ、確実に届けることが重要です。今後は農業分野に加え、食品や日用品などさまざまな業界への展開を計画しています」と述べています。
さらに、株式会社スペースはこのたび、事業の加速を目指してシリーズAの資金調達を開始。これにより、マーケティング費用やシステム開発、人員の拡充を計画しているといいます。社会インフラとしての物流の改革を進め、地域経済や生活コストの負担軽減に貢献するための新たな一歩を踏み出しています。
まとめ
株式会社スペースの取り組みは、単なる物流の改善にとどまらず、地方経済や企業の競争力を高める重要な役割を果たそうとしています。その活動は、サプライチェーン全体にわたって持続可能性を追求する新しいモデルを提案しています。興味のある企業は、ぜひとも相談を検討してみてはいかがでしょうか。