緊急通知を手のひらに - D-HELOの特徴
近年、聴覚障害者が災害時や緊急時に迅速に情報を受け取ることの重要性が増しています。そんな中、国立大学法人岡山大学と情報技術開発株式会社(tdi)は、緊急通知音を振動と画面表示に変換するアプリ「D-HELO」を開発しました。このアプリは、聴覚障害者がリアルタイムで緊急情報を把握できることを目指しています。
D-HELOの機能
このアプリは、Apple Watchを利用し、例えば緊急車両のサイレンの音を認識、ユーザーに振動や画面表示で通知を行います。聴覚障害者の方々との対話や検証実験を重ね改良されたこのアプリは、2025年の一般利用に向けて準備が整いました。
開発の背景
D-HELOの開発には、1950年に発生した岡山盲聾学校寄宿舎での火災事故が影響しています。この事故では、16人の聴覚障害児が犠牲になりました。このような悲劇を二度と繰り返さないために、緊急時の情報提供の重要性が強く認識されています。
本プロジェクトの実施
2022年度、D-HELOは国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の支援を受け、「障害者対策総合研究開発事業」に採択されました。その後、3年間の開発期間を経て、2023年度には岩手県と岡山県で聴覚障害者40人を対象に実証実験が行われました。この実験では、音の感知精度や反応時間、実生活での使用感が評価されました。
ユーザーの声を反映
アプリの改良はユーザーのフィードバックを基に行われており、今後も様々な意見を受け入れながら進化していく予定です。2024年10月には東京のサイエンスアゴラでワークショップを開催し、多様な意見を集約してさらなる開発に取り組んでいく計画です。
今後の展望
「D-HELO」は、聴覚障害者だけでなく、地域全体の安全性向上を目指しています。あらゆる人々が安心して生活できる環境を作るため、引き続き努力を重ね、情報技術の進展を活用していく所存です。岡山大学は、地域の中核となる研究大学として、今後もさらに斬新な提案を続けていく方針です。
メッセージ
開発を進めた片岡祐子准教授は、「D-HELO」の開発は社会へ貢献するための強い思いから始まったと語ります。聴覚障害者にとって、緊急時の情報をいち早く届けることこそが、彼らの安全を守る鍵だと実感しています。
この新しい技術が、多くの人々の生活を支え、安全で安心な社会を実現するための一助となることを期待しています。日本の未来を見据えた取り組みとして、D-HELOがどのように発展していくのか、今後もその進展を見守りたいです。