書籍紹介
2025年6月19日、株式会社新評論から新刊『アイルランドから東北へ-周縁と漂着の詩学』が発刊されます。本書の著者、佐藤亨氏は、教養や文化に縁遠い場所で育まれた「故郷」の意味について深く考察し、そこから形成される精神を描いています。本書は2005年に発表された『異邦のふるさと「アイルランド」―国境を越えて』の続編であり、20年の年月を経て、東北とアイルランドという二つの地域の関連性を探ります。
内容概要
本書は多様なテーマを扱い、民族紛争の痛みを背負った場所から、異教信仰が脇に追いやられている現状にまで視野を広げています。「周縁」の世界、つまり社会の隅に位置する人々の視点を大切にし、その声を拾うことに重きを置いています。目次は以下の通りです。
- - 第1章: 東北へ、東北から
- - 第2章: 北アイルランド詩人の地名詩―シェイマス・ヒーニーの『アナホーリッシュ』を読む
- - 第3章: サラエヴォ、ベルファスト、ヨーロッパ
- - 第4章: 『さらわれっ子』の想像力―アイルランドと東北
- - 第5章: ペイガンをめぐって―周縁文化についての一考察
- - 第6章: 在日コリアンの詩の風景
- - 第7章: 植民地と故郷―清岡卓行、三木卓、後藤明生
「漂着」の思い
「漂着」という言葉は、著者の人生の中で繰り返されるテーマでもあります。著者は故郷である岩手を離れ、東京での大学生活を経てアイルランドに出会いました。この「漂着」によって、東北やサラエヴォ、旧満州といった地域の文化や歴史に目を向けるようになったといいます。このように、著者の詩的な探求は、まさに「本能の底荷」を感じさせ、過去と現在、そして自らのアイデンティティが交錯する場所を描き出しています。
感慨深い出版
本書が新評論から、同じ編集者の手によって出版されることは著者にとって特別な意味を持ちます。前作からの20年という歳月が流れ、作家としての成長を実感しながら、再び「漂着」の詩学に挑みます。故郷の原風景と世界の周縁的な題材がどのように結びつくのか、読者はその答えを見つける「航海」に誘われます。
著者プロフィール
著者、佐藤 亨は、1958年生まれで青山学院大学の教授を務めています。専門はアイルランド研究や現代詩です。彼の著作には、アイルランドに関する複数の著書があり、文学を介して文化と歴史の壁を越えようとしています。
書籍情報
- - 書名: アイルランドから東北へ-周縁と漂着の詩学
- - 価格: 3960円(税込)
- - 発売日: 2024年6月19日
- - 購入先: Amazon, 楽天ブックス
出版社について
新評論は1952年に設立され、人文・社会科学に関する専門的な書籍を中心に刊行している出版社です。良書の発行を目指し、現実的知性の発見に向けた努力を続けています。