祈りを再生する「花再生(リバイバル)」事業
広島市安佐南区にある菩提樹では、使われなくなった仏壇を現代的な形で甦らせる新たなプロジェクト「花再生」が始まりました。この取り組みは、広島県から「経営革新計画」として正式に認定され、地域に根付く伝統技術を守りつつ、現代社会に合った祈りの形を模索しています。
現代の住宅事情と仏壇の変化
かつて日本の多くの家庭には先祖を祀る仏壇がありましたが、近年の住宅事情の変化から、若い世代は仏壇を持つことが難しい状況にあります。特に、マンション住まいや小型住宅の増加が影響し、「仏壇を置くスペースがない」といった理由で、多くの家庭が仏壇を手放しています。この影響で、仏壇業界は市場規模が縮小し、熟練の職人の数も減少しています。しかし、それでも「先祖への祈りを絶やしたくない」という思いを持つ人々が少なからず存在しています。
「花再生」事業の意義と流れ
「花再生」は、古くなった仏壇の解体から始まります。これまで家にあった仏壇を職人が一つ一つ丁寧に診断し、再利用可能な素材を選びながら、現代の住空間にFITさせたデザインに仕上げます。その流れは大きく以下のステップで構成されています。
1.
診断と引き取り: 古い仏壇を預かり、その状態を調査します。再生に適した部材を選定します。
2.
継承の確認: 本尊や位牌がどのように保存されるべきかを確認します。
3.
設計と意匠提案: 住宅の雰囲気に合ったサイズとデザインを検討します。
4.
再生加工: 伝統的な技術を活かしながら、新たな祈りの形に再構成します。
5.
仕上げと納品: 完成した作品は、全く新しい祈りの空間として納品されます。
このプロセスは単に物を再生するのではなく、依頼主の想いを引き継いだ「祈りの再生」を一つの形にしています。
技術と意匠の融合
「花再生」の大きな特徴は、広島金仏壇の伝統技術を活かしている点にあります。特に、以下の三つの技法が重要です。
- - 欄間彫刻: 仏壇の上部を飾る透かし彫りを木製アートパネルとして再構成。
- - 金具細工: 古い装飾金具を磨き新しい配置で配置し、装飾性を高めます。
- - 蒔絵装飾: 金粉を施した伝統的な技法で、照明に反射する光を演出します。
これらの技術を掛け合わせることで、単なるリメイクを超え、深い意味を持つ「祈りの再構築」が実現されます。
供養までの全過程
仏壇部材の中には再生できないものもありますが、菩提樹ではそれらを丁寧にお焚き上げする「供養祭」を実施しています。この祭りでは、僧侶を招き、解体された仏壇に感謝の意を示すために読経が行われます。毎年秋の彼岸には、この供養祭を通じて「感謝と再生の儀式」として位置づけ、伝統を大切にしています。
菩提樹の今後の展望
現在、23本目の「花再生」が進行中であり、今後も寺院や仏具店、葬儀社との提携を強化し、全国からの仏壇引き取りに対応する体制を整えいます。この事業を通じて、失われつつある職人技と、失いたくない祈りの心を次世代に繋いでいく新しい試みとして展開していく予定です。
会社情報
菩提樹(ぼだいじゅ)の所在地は、広島県広島市安佐南区伴東4-14-9で、代表者は上田哲司氏です。今後も多くの方に愛される「祈りの文化」を守っていくことが期待されます。