日本の水資源保全に向けた新たな取り組み
最近、日本における水資源の問題が顕在化しています。特に、水インフラの老朽化による災害や水道料金の高騰が深刻な問題です。また、担い手不足によって水源涵養林の劣化も見られています。これに加え、農作物の輸入においても、干ばつや豪雨の影響で収穫量が減少し、原材料価格の上昇に繋がっています。こうした背景から、水問題に対処するための企業間連携が急務となっています。
そんな中、5つの大手企業が連携し、3月5日から「ジャパン・ウォータースチュードシップ(JWS)」を発足させました。この取り組みは、国際的な水管理の基準を国内に持ち込み、日本の水資源保全の取り組みを一層強化することを目指しています。
JWSの概要と目的
JWSは、スコットランドに本部を置くAlliance for Water Stewardship(AWS)との連携により、日本国内での責任ある水資源管理の促進を図ります。具体的には、企業が協力し、流域の水資源保全に向けた活動を行う環境を整備します。また、企業間のネットワーキングや行政機関とのコラボレーションも推進し、水リスクへの対応力を強化していく計画です。
特に注力されるのは、日本語での研修プログラムの提供や、流域・サプライチェーンにおける協力活動です。2025年からは、日本をウォータースチュードシップ推進の戦略国として位置づける方針が示されています。
AWSの役割と背景
AWSは、水の持続可能性を国際的にリードする機関であり、世界自然保護基金(WWF)やThe Nature Conservancy(TNC)などと連携しています。ウォータースチュードシップは、「要所や流域を起点に、利害関係者を巻き込む形で実行される社会的・文化的に公平で、環境的に持続可能、かつ経済的にも有益な水の利用」と定義されています。
現在、200以上の企業や団体がAWSのメンバーとして加盟しており、約300の施設がAWS認証を取得しています。新たなメンバーを募集中で、参加を希望する団体は公式サイトでの登録が可能です。
参加企業の取り組み
JWSに参加する企業には、八千代エンジニヤリング、MS&ADインシュアランスグループ、栗田工業、サントリーホールディングス、日本コカ・コーラの5社が名を連ねています。それぞれが独自の取り組みを進めています。
八千代エンジニヤリング
この企業は、流域における水資源の調査や解析に長年携わり、国や地方自治体の水関連政策に寄与しています。具体的には、水資源管理やリスクアセスメントの支援を行い、AWS導入支援を通じて流域の健全性向上に寄与しています。
MS&ADインシュアランスグループ
MS&ADは、自然の保全を意識し、流域治水や水循環保全を推進しています。地域の大学や金融機関と連携し、実践可能な水管理の仕組みを構築しています。
栗田工業
水処理に特化したこの企業は、環境課題の解決に貢献することを目指しており、国際的なコレクティブアクションにも参加しています。
サントリーホールディングス
サントリーは、日本初のAWS認証を取得しており、これを通じて国内企業への浸透を進めています。特に、プラチナ認証を持つ製造工場が3つ存在します。
日本コカ・コーラ
この会社は、AWSのグローバルメンバーとして、流域の水管理を進めており、国内事業を通じてウォータースチュードシップの振興に力を入れています。
未来展望
JWSの始動は、日本の水資源管理において新たな時代を迎える重要な一歩です。AWSのCEOエイドリアン・シム氏は、日本には強いウォータースチュードシップの意識を持つ企業が多いとし、各企業が直面する水のリスクに取り組むことで、共に持続可能な未来を切り開いていくことが期待されています。水問題に対する企業の取り組みが、今後も多くの仲間を巻き込みながら進展することを願っています。