バイオ医薬品製造を革新する新技術
富士フイルム株式会社(東京)と株式会社堀場製作所(京都)が共同で開発した「インラインラマン高感度計測システム」が、バイオ医薬品の製造プロセスに大きな変革をもたらそうとしています。この新しい技術では、その名の通り、製造工程における成分濃度をリアルタイムで可視化できるため、抗体医薬品の収率を約10%も向上させることが確認されています。
バイオ医薬品の現状
バイオ医薬品は、タンパク質などの生体由来分子を基にした医薬品で、抗体医薬品や細胞・遺伝子治療薬などが含まれています。これらはがんや免疫疾患の治療に使われるほか、年率約9%で成長している市場です。しかし、この製造過程ではごくわずかな条件の変化が製品の品質や収率に影響を与えるため、正確な成分分析が欠かせません。従来のサンプリング方式では、リアルタイムでの分析が難しく、これが製造効率の制約がありました。
新システムの特徴
「インラインラマン高感度計測システム」は、高感度ラマン分光装置とシングルユースプローブ、そして新しい計測アルゴリズムから成っています。これにより、微弱な信号を高効率で取得し、高精度な分析を提供します。特に、過酷な環境下での使用実績がある堀場製作所の技術が、信号の乱れを最小限に抑え、安定性を確保しています。
また、富士フイルムは独自の光学設計技術を駆使しており、これが高集光効率プローブの実現に寄与しています。短時間の測定でも高い精度を維持しつつ、計測のスループット(処理能力)を向上させることができ、製造プロセスの精密な制御が可能になります。
実用化へ向けた取り組み
今後、両社はこの計測システムの実用化に向けて実装検証を進める予定です。目標は抗体医薬品をはじめとする高品質なバイオ医薬品の安定製造を実現し、製造コストの削減に貢献することです。同システムがもたらす製造工程の可視化とデータ分析は、製造の効率性を高める大きな要素となるでしょう。
今後の展望
バイオ医薬品製造において、このインラインラマン高感度計測システムは単に収率を向上させるだけでなく、製造プロセス全体の品質安定化や迅速化を図るための重要な手段となると期待されています。培養工程の連続的なリアルタイム分析により、同一のバッチ内での変動を特定し、プロセス開発の迅速化にも寄与します。
まとめ
富士フイルムと堀場製作所が共同開発したこの新技術は、バイオ医薬品製造における効率性と安定性の向上に直結し、これからの医療技術の発展に寄与する可能性を秘めています。今年6月には、米国サンディエゴで開催される「BIO International Convention」にも出展予定であり、その反響が今から楽しみです。