鳥類の「色」と「食」、進化の謎を解く
岡山大学の研究チームが、鳥類の体色と食欲を調整する二つのタンパク質、アグーチシグナルタンパク質(ASIP)とアグーチ関連タンパク質(AGRP)の違いについて新たな発見をしました。この研究は、鳥類がどのようにして多様な環境に適応しているのかを理解する上で重要な手がかりを提供します。
異なる「職」が生む生理的な特性
ASIPとAGRPは共通の祖先から派生した「兄弟分子」と言われ、それぞれが異なる「職」を持つことが知られています。ASIPは体色を制御し、AGRPは食欲や代謝に関与しています。しかし、これらがどのように進化して異なる機能を持つようになったのかは、これまで詳しくは解明されていませんでした。
研究グループは、ニワトリにおけるASIPとAGRPの分泌特性を比較解析しました。その結果、ASIPはAGRPに比べて細胞から分泌されにくいという特性を持っていることが分かりました。この違いは、ASIPのN末端ドメイン構造に起因しています。
分泌特性が示す進化の道筋
研究チームは、ASIPの構造がプロテアソームを介したタンパク質分解を誘導し、これが分泌を制限する要因になっていることも特定しました。これは、同じ起源を持つ二つのタンパク質が、全く異なる機能を持つように進化してきた背景を理解するための重要な示唆を与えています。
特に、ASIPとAGRPの分泌特性の違いは、鳥類が色彩と食欲をどのように巧みに調整しているかを考察する上での新たな観点を与えてくれます。
研究の意義と今後の展望
福地響紀大学院生は、「鳥類の羽の色模様は、精緻な調整によって作られている。この研究がASIPとAGRPの機能を理解する手助けとなり、鳥類が多様な環境に適応してきた理由を探る材料になることを期待しています」と述べています。
今回の成果は、国際学術誌『Comparative Biochemistry and Physiology, Part B』に発表され、今後の生物学的研究に新たな視点を提供すると期待されています。
この研究を通じて、分子レベルからのアプローチがどのように生物の進化の謎を明らかにしていくのか、ますます注目が集まります。